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一定のテンポで音が鳴っているのが聞こえる。重たい瞼を持ち上げると、明るい光が射し込んで目をしかめた。
「大輝……!」
母さんの顔。クマができていて、目は充血してるし酷い顔だ。俺の手を痛いくらい握り締めている。
そして自分がベッドの上に横たわっていること、また身体に力が入らず、また全身のあちこちが痛むことに気付いた。
「お父さんっ、大輝が、目を……!」
母さんの声の方に少し頭を動かすと、飲み物を買ってきたところだったのか、部屋のドアの前で缶コーヒーを二缶握り締めて立っている父さんが見えた。
「大輝……」
歩み寄ってきた父さんはベッドの脇に立ち尽くして、俺を見下ろしながら涙を浮かべている。
「……ごめん……」
上手く言葉が出ない。それだけ言うと、母さんは涙を流しながら横に首を振って、「良かった」と一言呟いた。
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