其ノ恋、一回壱萬円也

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「お前、卒業式の日に家にいなくていいのか? お祝いとか、あるんじゃないのか?」 「パーティーは、後日改めてやる、って。父さんの都合だから、仕方がないよね」  麻希の家柄からしておそらく、政治家や付き合いのある仕事関係のトップも呼ばれるのだろう。  自分の祝いの席にまで、ビジネスの思惑が入り込む麻希に、一真は切なくなった。 「よし、来い。俺がお祝いしてやる」 「あはは。無理しないでいいよ」  それきり切れてしまった短い電話だったが、一真は生気を取り戻していた。  よし、来い!  この想い、ぶつけてやる!  これまでで一番の勇気と無謀さを抱えて、一真は告白の意思を固めた。
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