ある人の言う黄金の日々

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ある人の言う黄金の日々

なるほど、日々に喜びを感じられなくなったと。 ふむ。 それは確かに、お辛いことでしょう。 ーー 庭に咲いた八重山吹に風が戯れている。 私が想うに、つまり。 もしあなたが、日々に喜びを感じられないのだとしたら、それはあなたが、あなた自身のことでしか喜べなくなっている可能性があるでしょう。 人ひとりの身の上に起こる幸いなど知れたもの。 春は瞬く間に過ぎるもの。 ーー 八重山吹を撫でていた風が、空へとむかう。 あなたが、誰かの喜びを自身の喜びと感ぜられるのであれば、その時。 おそらくその時、あなたの日々は黄金と言ってもよい輝きを、持つのではありませんか。 ーー 雲が流れ、八重山吹に強い光が刺す。 ーー 鮮やかな季節がはじまる。
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