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「何をモタモタしているのだシルキー。早く来なさい」
パリッと糊の利いたシャツ、胸元には上品な薄紫のアスコットタイ。そしてフロックコートにシルクのトップハット。
いつも通りお洒落で洗練された着こなしの骸骨が庭先でボクを呼んでいる。
なぜか苔むした古いリヤカーを毅然と引いて。
「どうしたんでちか、ご主人さま。そんなモノ持ち出して」
「おおシルキー、今日が何の日か忘れているとは。いったい何年私の召使いをしているのやら」
優雅に肩をすくめ、ドクロ顔の歯をカタカタ鳴らす。
ボクのご主人さまは、老衰で死んで全身骸骨になっても英国紳士である事を忘れない、英国幽霊なのだ。
「今日って10月の……? あ! ハロウィンでちね」
「ザッツライト。毎年、町には仮装の人間が溢れるゆえ、それに紛れて堂々と買い出しに行く日ではないか」
「わああ、そうだったー。今すぐお支度してきまち! 待っててくだたいー」
慌ててボクは宙をふわわーんと飛び、屋敷へと向かった。
そういうボクの本体も実は頭蓋骨といくつかの骨だけ。テルテル坊主のようなハリボテを被り、ご主人さまのお世話をして暮らしている召使幽霊だ。
(ちなみにこのハリボテはご主人さまのお手製)
でも舌がなくなったせいか、どうしてもおしゃべりが舌ったらずになっちゃいまち。
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