高飛車でうざい男

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ここは、怒ったフリをして回避だ。 「邪魔するつもりですか?い、いやです。絶対案内しません」 「馬鹿なっ。木庭くん、私は正々堂々とライバル宣言をしておきたいだけだ」 「ライバル宣言なんて必要ありません。 やめてください。彼とは、まだ何にも始まってないんですよ?傘を貸してもらっただけです」 「しかし、なんて羨ましい男なんだ。木庭くんからのご寵愛を黙って一人で受けるなんて」 「社長…もう帰ってくれませんか?車はどうしました?運転手さんも待ちくたびれてますよ」 道路を眺めて見たが、社長の車は見当たらない。  「車は呼ばないと来ないはずだ」 「どうしてですか?待機させて置いてるのかと」 「いや、運転手には木庭くんから『今日こそ私の家にお寄りください』と言われる気がするから待機してなくて大丈夫だと言っておいた」 「は?正気ですか?」 「ああ、もちろん。キミに言われたら、どんなに時間がなくてもキミの為に時間をさきたい。お寄りくださいと誘われれば、まだ関係を深めるのは時期尚早と思っても、やはりキミの家にあがってしまうだろうし」 なにが、時期尚早だ。 馬鹿らしい。 「心配しなくても誘いませんよ」 「キミに家に誘われたら、俺は断らないつもりだった。だから、車を返したんだ」 「すぐに呼んだほうがいいですよ。車」 「今ならまだ間に合う。俺を誘ってもいいぞ。木庭くん」 社長は私の肩へ手をおいた。 「木庭くん、キミを一人寝させるのは心配だ。今夜も多忙な俺が添い寝しようか?」 何が添い寝だ。 ゾッとする。 「結構です。多忙なら早く帰って下さいっ」 「木庭くん……キミが好きだ」 おっと、出た。真面目ぶった告白。 イケメン面だから、割と始末に悪い。 顔だけみてると一瞬、ドキッとなってしまう。 「へっ、なんで急に」 「木庭くん、俺はキミを大事にする用意がある。誰より何よりも大切にする。だから、いい加減に俺のことを好きになってくれ」 「社長、申し訳ないですが、あきらめて帰ってもらえませんか?」 「ふぅ……キミの壁は果てしなく高いな。わかった、わかった。今日は帰る。また月曜日会社でな。ふぅ」 大きなため息をつかれていた。 ため息をつきたいのは、断然私の方なのに。 「はい、月曜日に。ふーーっ」   「木庭くん、最後にハグだけさせてくれ」 両手を広げる社長。 「嫌です」 「ハグだけなのに。何もキスさせろとは言ってないだろ?はーーハグも無理なら、せめて握手だけは頼む」 仕方なく手を差し出すと社長が両手で私の手を覆った。 「いつか木庭くんが俺を好きになりますように」 握手しながら、ブツブツ念仏みたいに唱える社長。 なんなんだ。この男は。本当にうざい。 世にも奇妙で速く離れたい。 帰り際、 「木庭くん、今夜俺の夢を見るといい」 と極めてキモいことをいった。 ★★ ようやくキモイケ社長が帰ってから、私はソファにゴロンと横になった。 「あー、疲れた。あの社長から逃れるには、やっぱ転職しかないのかなー……ふーーっ」 天井を見上げ本気で悩み、また深いため息をついていた。
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