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「さあ、私には何とも……」
「木庭くん、確認の為に聞いておきたいことがある」
社長の瞳は、まっすぐに私を捉えていた。
「はい、なんでしょうか?」
「キミは…本当に俺の彼女になる気は少しも無いのか?」
「少しもありません」
何度でもきっぱりと言っておこう。
「それなら…仕方ない。キミが俺に合いそうな女性を適当に見繕ってくれないか。キミが連れてきた人と俺は付き合うよ」
頭がおかしすぎる。
アルバイトを雇うように付き合う人を秘書に連れてこさせるなんて。
「はあ?なんですかそれ」
「本気だ。キミと付き合えないならオレはキミが選んだ女性と結婚する。政略結婚だけはしたくないからな」
「だからって私にそんな……」
私から視線を外してシートに身を沈めた社長は車の外を眺め始めた。
「昨日、キミと別れてから真剣に考えてみたんだ。何度もキミに振られて深く傷ついた。思っていたよりもダメージが酷くて」
「キミを信頼しているんだ。キミと添い遂げられないのなら」
社長は、顔をコチラに向け
「将来の伴侶は、キミに選んでもらいたい」
と言い切ったのだった。
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