雨の日の偶然

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雨の日の偶然

月曜日になった。 会社での社長は、割と評判がいい。 社長がメガネをかけて仕事をバリバリこなす様子は、見ようによっては格好いい。 私以外の他の女子社員たちは、社長にうっとりした視線をなげてよこす。 廊下でもエスカレーターでもロビーでも皆がお辞儀をしながら色めき立つ。 「今日も素敵ねー」 「我が社の誇りね」 「一夜でもいい、お供したいわ」  そんなコソコソ声が必ず聞こえてくる。 そんな視線やコソコソ話をもろともせずに社長はさっそうと歩き自動ドアをとおり外へ出て黒塗りのベンツに乗り込む。 「木庭くん、この後の予定は?」 車の後部座席に座るなり社長が聞いてきた。 「12時30分からA物産の賀茂社長と会食です。その後、15時から会計士の東先生と打ち合わせ、19時には会長宅にご訪問予定です」 「会長宅への訪問?聞いてないぞ」 社長は不機嫌そうな声を出した。 会長というのは、社長の父親である。 「はい、急遽決まりました。会長の奥様から社長にお話があるそうで」 「どうせ、見合い話だろ。何度断ったら気が済むのか……」 社長は、私の方へ顔を向けた。 「決まった女性がいれば、母さんも諦めるとは思わないか?木庭くん」
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