第一話 南 瓜太郎

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「宮子、白石さんが買ってきてくれたお団子を一緒に食べましょうか。その後は宿まで送りますよ」  叔父の仕事は数日程かかるらしく、叔父や宮子と同行していた叔母も一緒に宿に泊まるという話を聞いていた。これ以上宮子をここに置いておいては宮子の教育上良くない、そう咄嗟に判断しての南の提案だったのだが、宮子があからさまに「えぇー?」と不満を顕にしている。 「私、叔父様の仕事中はここに泊まりたいです。もっと色々お話を聞きたいです!」 「いけません、ここは屯所で遊び場ではないのですよ? それに男ばかりの家に女の子一人泊めるなんて道徳的に有り得ません」 「大丈夫です! 私、自分の身は自分で守りますから! 兄様だって私が喧嘩で男の子に負けた事が無いのは知っているでしょう?」  同世代の幼い男の子に喧嘩で勝てても、自分を襲おうとする悪漢には勝てないと何故解らないのか。いや、隊員達を信用してない訳ではない。南の妹である宮子に下手に手を出したら、南の怒りを買う事くらい承知だろうし。  これ以上宮子に衆道趣味に染まってほしくない、ただの南の兄心だ。 「宮子、兄の言う事は聞いておきなさい。でないとここを出入り禁止にしますよ? たまに遊びに来るくらいであれば許しますから」  南が本気で怒ったら恐ろしい、まだ諌めるような口調である内は本気で怒ってはいないが嵐の前触れのようなものだ。それを知っているからか鶯谷が「そうだよ、また遊びに来りゃいいじゃん!」と南に同意した。 「また来てもいいのですか? その時にまた色々お話してくださいますか?」 「もちろんだっての!」  安易に返事をした鶯谷は、その後自分の発言を後悔したらしい。  その後実家に帰った宮子から南宛に「何か衆道的な面白いお話はありましたか?」と何度も文が届き、たまに遊びに来た時は「衆道的な進展はありました!?」と興奮する宮子を屯所内で見かけるようになってしまったのだから。 【終わる】
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