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この特別守護隊は隊員もそんなに多くない。だから櫻野一人でも束ねられる。
元々国の守護隊は別にあった。大きな組織で、何十人という隊員を抱えている。その中から素質のある者達だけが選ばれ、特別守護隊として隊を分けられたのだ。
その素質、それはこの国を揺るがす敵を消滅させるという特殊な物。
「櫻野さん、何だか怪しい気配がしますね~」
「怪しい気配?」
「肌がピリピリするような感覚……アイツらですかね~」
白石は特別守護隊の中でも特に素質がある。敵が出てくる前に何かを察知をする事が出来るのだ。
その気配はどこから、と辺りを窺っていると、後方から男性の悲鳴らしき物が聞こえてくる。
「白石!」
櫻野と白石がお互いに目を合わせ、まるで合図のように頷く。そして声がした方向に向けて走り出した。
二人が辿り着いたのは裏道を入ってすぐの僅かに広がる空き地。そこで悲鳴の主なのか髷を結った男が木の棒を振り回しながら何かを振り払うようにしている。
その何か、それは淀んだ霧のように暗い影の塊。木の棒が身体を貫通してもフワリと空気が揺れるだけで、何の損傷も受けてない。
「櫻野さん、僕が行きます!」
白石の目と口調が変わった。いつもなら間延びしたようなおっとりした話し方なのに、表情まで引き締まっている。その白石が帯刀していた刀の柄に手を掛け、居合いのように鞘から刃を抜くと同時に男を襲っていた黒い霧の塊を斬りつけた。
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