第五話 白石 春之助

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 屯所の朝は騒がしい。  巡回に向かう者や稽古をする者の為に早くから朝ご飯の支度をする。  食事の支度も片付けも主に事務と雑用を任されている南がしているが、一人では大変だからと手の空いている隊員が手伝うようにしていた。 「白石さん、其方の片付けが終わったら四方木さんの食器を回収してきて頂けますか?」  台所で忙しなく動く南が申し訳無さそうに白石に頼み事をしてくる。此方こそ南にばかり任せっきりで申し訳ないのに、と苦笑しながら白石が「いいですよ~」と頷いた。 「私は水を汲んできますから。お願いしますね」  そう言うと南は桶を手にさっさと井戸へと向かって行ってしまう。寧ろ水汲みの方が重労働なのに、南は大変な仕事の方を率先するのだ。話し方や所作は穏やかなのに、仕事となると機敏に動く真面目で働き者なのだろう。  今は隊員もそれ程多くないから南一人が料理番でも問題無く回せているが、これ以上隊員が増えたらそうはいかないな、と白石はぼんやり考えていた。  先日、隊員が集められ安納が町で得たという情報を明かされた。  元々魔物が居る所には必ず使役している人間が傍に居るという情報は入ってきていた。だがまだそんな人物を目にした事は無く、その情報の信憑性を疑っていたが、これでハッキリとしたのだ。  魔物を使役している人間は必ず居る。  その為昨日から隊長の栗林はアンパン城へ赴いていた。情報の共有、そして新たな隊員の発掘の為でもある。今のままでは戦力が足りないとでも思ったのだろう。  ただでさえ屋敷の部屋は狭く、夜は隊員達が一部屋で雑魚寝をしているような状況なのに、隊員を増やしても大丈夫なのか。それにこの特別守護隊には屯所の一部屋を占領している変わり者も居るし。 .
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