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「おや、皆さん。こんな所で何をしてるのですか~?」
その場が程よく打ち解けてきた所で、どこか力の抜けそうなほのぼのとした声が聞こえてきた。その声の主、日に透けるような白い髪の白石春之助が風呂敷に包まれた荷物を抱えながら、庭で談笑していた南ら四人に声を掛けてきたのだ。
その隣には険しい顔をした、この特別守護隊の副隊長である櫻野餡次郎。
「白石さんに櫻野さん、おかえりなさい」
「ただいま~。丁度良かった、皆さんにお土産を買ってきたんですよ~」
間延びした話し方の白石が、南に向けて持っていた風呂敷包みを掲げて見せる。
「お土産? 巡回に行っていたんじゃないのですか?」
白石は南より年下ではあるが、南は敬語を使っていた。それはどの隊員相手であっても変わらない。そこが南の育ちの良さを物語っているようだ。
南の実家は料亭、上流の客人を相手にしていただけあって作法や言葉遣いには厳しかった。それなのに南の妹である宮子は野を駆け回り自由奔放に育ってきたのだから、両親が妹に甘い事は目に見えている。
「美味しそうなお団子があったから、つい買っちゃいました~。皆さんで食べましょう?」
無邪気にそう言う白石の隣で、真面目な性格の櫻野が「はぁ」と溜め息を吐く。
「巡回も仕事の内だぞ? その途中で団子なんて買うか?」
「いいじゃないですか~。美味しい物は皆で分け合わないと」
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