第弐章 暗夜の中、庭の光

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それから2年の月日が経ち、エリカは7歳になった。 通常このくらいの年齢の子どもは、尋常小学校に通っているのだが、エリカは例外だった。それは「外出禁止」という条件があるせいだった。 結局エリカは1人で離れで暮らしている。勿論家事も全てこなし、数少ない人と話す機会は全て日本語で行っている。 それこそ最初は魚を焼くにも、黒焦げの炭にしたり、鍋を吹かして爆発しかけたりと何かと事件事故を起こしかけていた。そしてそれをみかねた材料を届けてくれるお手伝いさんの梅が、料理を基礎から秘密裏に教えてくれることとなった。そしてそのうち、繕い物や読み書き、簡単な計算まで教えてくれるようになった。新しいことを習得していくことは、エリカにとって刺激的でとても楽しいことだった。 だがそんな日々もある日突然終わりを迎えた。 梅が死んだのだ。 筑前煮について教える約束をした日、離れの戸を叩いたのは知らない女性だった。そしてその人は感情のない冷たい顔で「前の人は死んだから」とだけ一言言った。突然のことに唖然とし、その後理由を問おうと詰め寄るエリカに、彼女は「あたしに構わないで頂戴!」と突き放すように詰った。 そしてその翌日からは、彼女は決まった時間に食材を入れた籠を置き、エリカと顔を会わせないようになった。
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