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実際エリカは取り外してみて、目を見開いた。
薄いピンクのガーベラに可愛らしい白の霞草だ。
来客用の飾り花がこんなところにあっていいのかとエリカは驚き、顔を上げた。
「大丈夫でしょ。あんなにごてごての薔薇だらけの中から、ガーベラ一本無くなっても誰も気づきもしませんよ」
肩を竦める由貴斗。確かに華美に彩られた花々の中でガーベラや霞草はほとんど目立たず、最早引き立てにもなっていない。
決して由貴斗の言動は誉められたものてはないが、的を射ているだけにエリカは咎めもせずにクスリと笑ってしまった。
「ここにいてもいい?」
あまり他人になつくことのないエリカだったが、気がつけば口からはそんな言葉が溢れていた。
由貴斗の隣は穏やかな時が流れていた。日頃からギスギスした空気に当てられてきたエリカには、その雰囲気がどこか酷く懐かしかった。
「いいですよ、お嬢様」
出会ったときと全く同じ文句を口にし、由貴斗はふわりと笑った。
目元は相変わらず髪に隠れていたが、それでも紅仁には笑っているとはっきりわかった。
大正3年、如月の暮れ。
暖かな春までもう少しの庭の南外れ。
エリカは自分の運命を後に大きく動かすことになる人物に出会った。エリカ・アンジュ・サミュエルソン、またの名を壱倉永莉佳、7歳の頃の出来事である。
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