第一幕 告白の行方【現代編】

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「まさか、彼氏がいるとか?」  高田が黙り込むマリをあやしんで訊いてきた。 (まさかってどういう意味) 「おつきあいしている人は、いません」  マリはできるだけ感情を顔に出さないよう、大人の対応をとった。 「僕は好みのタイプじゃない?」  そう言われ、改めて高田を見返す。  身長一六七センチのマリの視線は、高田を見下ろしていた。ただし、ヒールの高さを差し引けば、ほぼ同じくらいの体格だ。 (思ったより、小柄なのね)  ハキハキとした話し方が堂々と見せていたのかもしれない。実際の高田は、男性にしてはなにもかもが小さくまとまっている。  目、鼻、口、どのパーツもそれなりに整っているが、小ぶりで主張がほとんどない。そのせいか、幼い印象だった。  思ったままの言動だって。 (まるで小学生みたいだわ)  かといって特に好みの男性像があるわけでもないうえに常識人なマリは、社交辞令として「好みのタイプじゃない」という点に関してはいったん否定しておく。 「そういうわけじゃ」  しかしその判断は甘かった。高田の表情がぱっと輝き出す。 「とりあえずデートしませんか? 僕のことを知って欲しいんです」  高田には遠回しな断り文句を告げたところでどうせ通用しないのだ、とマリは諦めた。 (ごめんなさい。わざわざ出かけなくても、家にある水晶でなんでも()えるんです)  マリは、正真正銘の魔女である。  いっそ高田に魔法をかけたほうが早いとは思うものの、「しっかり魔法をかけるにはそれ相応の呪文を唱えなければならない、ここでは人目がありすぎてそれができない」というジレンマに陥っていた。  極力、魔法は使わないほうがいい。  魔女が人間界で暮らすためのルールだ。  正体が人間にバレてからの顛末は、歴史でじゅうぶんに学んだ。しかしながら。 「いつ空いていますか?」 (ああ、もう、めんどくさい!)  一向に攻めを緩めない高田に、マリは仕方なしと軽くウィンクした。途端に、世界がスパークする。 「あ、あれ? 俺、なにしてたんだっけ?」  そう言うと、高田は数度瞬きし、頭を掻きながらマリに背を向けて立ち去っていった。 (効力は弱いけど)  マリは、最小限の影響力で済む、「ど忘れ」の魔法を使った。
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