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「寺島くんでしょ。早く手を離しなさい」
ちゃんと冷静にいえてほっとした。彼も、あたりーなんていって素直に手を離す。
視界が解放され、教壇にたっているわたしよりも、更に上にある整った顔を見上げた。新しいおもちゃをみつけた子供みたいな顔をして笑ってる。
「へえ。みくセンセイって、眼鏡ないと童顔じゃん。かわいー」
盛大にため息をついてしまう。やっぱり先生にみられていない。背筋をのばし、気持ちを引き締め、できるかぎりの冷たい口調でいう。
「ふざけないの! それから、名前でよぶのはやめて! ちゃんと小鳥遊先生って呼びなさい」
「タカナシ? 読めねーし。てか、みくって名前、なんか好き。みくセンセイでいーよ」
「もう! じゃあ、とりあえず眼鏡をかえして! なんにもみえない!」
「ね、コンタクトにしなよ。その方がかわいー」
「余計なお世話! 先生にそんなことをいわない! 早く返して」
「はいはい。じゃ、じっとしてて?」
眼鏡を受け取ろうと伸ばした手を無視されて。彼は丁寧にわたしの耳に眼鏡をかけた。
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