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車のライトがやけに眩しくて、一瞬目を細めた。
折れちゃいそうなほど、小さくて華奢な体つき。車の強い風圧で煽られた髪から、いつだかと同じようにふんわりといい香りが立った。
「あぶねー運転!でもみくちゃんもさ、ちゃんとまわりを見てないと、ひかれて死ぬよ?」
俺の言葉にぼんやりと顔を上げたみくちゃんは、目を合わせた途端、今にも泣きだしそうに眉尻を下げる。
なのに、何かに吸い込まれているみたいに、目をそらそうとしない。近すぎるぷるんとした唇が、震えるようにゆっくりと開く。
その唇を無性に塞ぎたい衝動に駆られて、それを抑えるように自分の下唇をぎゅっと噛んだ。
「……あの…………あり、がと……」
半分声になってない声。言われた言葉はありがとうなのに、まるで「キスして」って囁かれたみたいに、脳がぐらぐら揺れた。
ぎゅっと抱きしめた体から伝わってくる熱と、少し速い鼓動。揺れる瞳。
「それよりみくちゃん、早く離れないとチューしちゃうよ?」
変な息苦しさから逃れるように冗談ぽく言ったら、
「……なななななな、なに言ってるの!」
DJのサンプリングかよってくらいどもるから、思わず吹き出した。
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