side:Miku

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ふわふわふわふわ。 不思議。地に足がついていないみたい。 うしろに伸ばされた寺島くんの腕。手のひらには、わたしの手が握られてる。スピードを出しすぎた車から守ってくれた勢いで、危ないからって手をつないでくれているだけなのに。 ドキドキが止まらない。この時間がずっと続けばいいって思ってしまう。 ダメ。生徒をそんなふうをおもうなんて先生失格。 それなのに。怖いくらいに高揚してしまう気持ちが止められない。だってわたしの方から、彼の手を、強く握ってしまっている。 「みーくちゃん?」 「は、はい?!」 いきなり話しかけられ、びっくりして飛び上がると、寺島くんが笑う。 「駅ついたよ」 「あ……」 気がついたら、もう改札口のまえにいた。いまさらながら駅のざわめきが耳に入ってきた。 「わ、わざわざ送ってくれて、ありがとう」 繋いだ手、なんだか離しがたくて。それでもずっと繋いでいるわけにはいかない。 力を抜いて、ゆっくり彼の手から離そうとした。けれど寺島くんは、すぐにわたしの手をつかみなおすと、もう1度握りしめた。 「みくちゃんの手、繋いでいると気持ちいーし。離したくないんだよね」 「えっ?」 見上げた寺島くん。いつもどおりのからかい口調のくせに、瞳がすごく優しくて。 わたしと同じように離れがたいって思ってくれている?  心臓の鼓動がさらに早くなって、胸の内側をドンドンと揺さぶる。
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