side:Miku

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はっとして首をふる。これはいつもの寺島くん。わたしをからかっているだけ。彼のペースに巻き込まれてはダメ。 気持ちを奮い立たせ、ひとつ息をはいてから口を開く。 「寺島くん、離しなさい。先生、もう行かないと」 できるだけ真面目な顔をして、強い口調でそういうと、寺島くんは一瞬、瞳を見開いた。それからゆっくりと手を離したから、ほっとしつつも、一抹の寂しさを感じてしまう矛盾。 けれどそんな葛藤も束の間だった。いきなり指一本一本しっかり絡める、いわゆる”恋人つなぎ”をしてきたから。 「て、寺島くん?!」 見上げると、挑発的にニヤリと笑う彼と目があった。 「だってさ、女の子と手を繋ぐなんて初めてだし。もうちょっと味あわせてよ?」 「ウソつき! いつも女の子と一緒にいるくせに!」 反射的に本心が声になって、でてしまった。 本来なら、先生が生徒にこんなふうに言うべきじゃない。まるで焼きもちを焼いている、同級生の女の子みたい。いってしまったあと、急激に恥ずかしさがこみあげる。 そんなわたしをみて、彼は楽しそうに笑った。女の子たちがいつもキャーキャー騒いでいる、親しみやすいくせに、どこか色っぽい笑みで。 「え、ホントだけど? 俺から手を繋いだの、初めてだから。あ、女から勝手に繋いできたりしたのはノーカンね?」 どうしよう。例えそれが嘘だとしても、嬉しいって思ってしまっている。顔がまともにみれない。だってまた、真っ赤になっているはずだから。 俯くと゛恋人つなぎ゛をしている、わたしたちの手が目にはいる。 寺島くんの手は、わたしに比べるとすごく大きくて。やっぱり男のひとなんだな、と思うと、またさらに、どきどきと恥ずかしさがわきあがってくる。 耳元で、みくちゃん、と甘く濡れた低い声で囁かれた。背中がぞくり、と震えた。 上を向こうとしたけれど、いきなり視界がカーキ色のパーカーだけになる。 すっぽりと包まれるように、寺島くんに抱き締められていた。
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