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みくちゃんが欲しい。
ただ単純に、そう思った。それはヤリたいとかそういうのじゃない。似てるけど違う。でもじゃあ、どういうのかって考えてみても、正直よくわからない。
しっかりと指を絡めて、それでも足りなくて、思わず抱きしめた。
俺の胸にポスッと収まった華奢な体。やっぱりほのかに甘い、いい香り。かたく繋いだままの手が熱い。
駅の構内に響き渡るピーンポーンって音が、なんだか違う世界の出来事みたいに遠くから聞こえる。
少し先の地面に落とした視線の先には、改札をせわしなく行き交う人々の足元。こんな人通りの多い所で何やってるんだろう。
でも、なんか……離したくない。
「……てらし、ま、くん」
みくちゃんがほんの少し、顔を上げた。戸惑ったような、なのにやけに熱っぽい上目遣い。
こんな女の視線なんて、腐るほど見てきた。別にこのくらいじゃ欲情できないくらいに。
「…………どうして?」
なのに、小さく動く唇もやけに色っぽくて。
あー、まただ。キスしたくてたまんない。
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