side:Miku

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そのあとの授業でも、寺島くんは一切こちらを見ようとはしなかった。 いつもなら、からかってきたり、笑いかけてくれていたのに。 どうして? もしかして、昨日わたしを衝動的に抱き締めたことを後悔してる? 涙が滲みそうになるのを必死に堪えて、なんとか午前中の授業をこなした。 わたしがそんな状態でも、授業は待ってくれない。むしろ忙しくて、余計なことを考えずにすむからよかったかもしれない。 食欲もわかないから、お昼も食べないで、授業準備や小テストの採点をこなして気を逸らす。夜、ひとりになったら色々考えてしまいそうだけど、やることが沢山あるのが救いだった。 チェックを終えた生徒たちのノートを抱え、昼休みに配ってしまおうと、渡り廊下にさしかかった時だった。 中庭に、見覚えのある人影がみえた。 寺島くん。そしてもうひとり。たしか隣のクラスの中田さん。一緒にベンチに座っている。 心臓がとくり、と音をたてたあと、その場を動けなくなってしまった。
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