side:Kanata

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うん、このイライラは、腹が減ってるからに違いない。 「あ、寺島くんだー」 昼休み、さっそく購買に行って並んでいたら、背後から女子の声。 「あー、早希(さき)ちゃん」 振り向いたら、隣のクラスの中田早希がニッコリ笑っていた。早希ちゃんは、学年で1、2を争うくらい可愛い。でも、よりによって俺なんかにまじで惚れてる、すごい難儀な子だ。 「寺島くん、購買なんて珍しいね」 「うん。今日、弁当ないんだよね」 喋りながら、女子と絡むのがやけに久しぶりなことに気づいた。 ゴールデンウィーク中は結局、店の手伝いしかしてないし。今日は朝から俺の機嫌が悪いせいか、女子達が全く近寄ってこないし。 最近絡んだ女なんて、それこそ昨日のみくちゃんくらいだ。しかも別に、ナニゴトもねーし。 ……あ、そういや俺、さいきんヤッてなくない? 「ねえ、たまには一緒に食べる?」 気づいたら、口が勝手にそう言っていた。途端に、早希ちゃんの黒目がちな目が、嬉しそうに弧を描く。 「うん! じゃあ中庭で食べよ」 実は早希ちゃん、俺がまだ手を出していない稀少な女子の1人。だって、俺のことガチで好きとか面倒そうで。でも、この際どうでもいい。もうヤろう。 結論。イラつくのは、さいきんヤッてないからだ。きっとそう。
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