Side:Miku

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なんで涙がでちゃうんだろう。 一瞬、寺島くんと目があった気がした。慌ててそこから視線を引き剥がし、落としたノートをかき集め、小走りでその場から逃げ出した。 バカみたい。バカみたい。バカみたい。 一体何をしているんだろう。生徒である寺島くんのことを意識してしまって。彼はわたしのことなんか、なんとも思っていないのに。 そんなこと、わかっていたはず。それなのに何故、こんなにも胸が苦しいのだろう。 焦げるような胸の痛み。涙も止まってくれない。 立ち止まったら、生徒に泣き顔を見られてしまうから。俯き加減で、職員室前のトイレを目指す。そこなら生徒はほとんどいない。 きっと今、わたしの顔は、心のなかと同じくらいぐちゃぐちゃだ。 ようやく職員室が見えてきて。足を早めてトイレにとびこもうと慌てていたわたしは、誰かとおもいっきりぶつかってしまった。 「きゃっ!」 バランスを崩して、手に持っていたノート数冊がバラバラとおちる。それを支えようとムリな体勢をしたわたし自身も、転びそうになった。 「おっと」 がっしりと男のひとの腕で、腰のあたりをホールドされ、転ばずになんとか持ちこたえた。
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