Side:Miku

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小鳥遊(たかなし)先生? 大丈夫?」 穏やかな声。同じ国語科の松井先生だ。年も近いこともあり、国語科の先生のなかで、1番話しやすい。優しい雰囲気でかっこいいから、生徒にも人気がある先生だ。 「だ、大丈夫、です。すいません」 顔を上げられないから、俯いたままボソボソそう呟いて、松井先生から離れようとした。 「ちょっと待って。なにかあった?」 松井先生がわたしとノートをまとめて抱きかかえるようにしながら、顔を覗きこむから、何度も首を振る。 「……なんでも、ないです。コンタクトがズレちゃって……」 目が合ってしまったから。咄嗟にそう言うと、松井先生は瞳を見開いて、一瞬わたしをじっと見つめた。それからすぐに穏やかな笑みを浮かべて頷く。 「……俺もコンタクトだからわかるよ。痛かったね」 なにかを察したはずなのに。何も聞かずに独特の優しいトーンでそう言って、背中をポンポンと労わるように叩いてくれたから。ボロっとまた、涙がでてきてしまいそうになる。 その時だった。 「あんたら、ナニやってんの?」 ひどく低くて乾いた声。慌てて振り返る。 そこには。 触れたら切れそうな鋭い瞳をした寺島くんが、いつの間にか、わたしたちの後ろに立っていた。    
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