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さっきまであんなに遠くにいた寺島くんが、わたしの手を強く握りしめ、前を歩いている。
見えるのは彼の背中と、繋がれている手だけ。でも彼の尖った空気は痛いほど伝わってくる。
先生であるわたしのことを、呼び捨てにして。そのうえ強引に手を掴んで、ひきずるように歩いてる。
生徒の振る舞いとしては、問題がありすぎる。教師として、ちゃんと注意しなくちゃいけない……はずなのに。
彼が同級生の女の子とキスをするのを目撃して、はっきり気づいてしまった。寺島くんがすきなんだと。
だから今、わたしだけに彼の意識すべてが向けられていることを喜んでしまう自分がいる。
はっとする。ダメ! そんなことを考えてしまうなんて。教師として許されるわけがない。
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