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一時間後。
「ただいまー」
一日ぶりに家に帰ったソウタは、荷物を降ろすと早速冷蔵庫を開けてボトルに入った麦茶を飲み干す。
(何故だろう、随分懐かしく感じる……)
綺麗に片付けられた台所。
さっきまでマドカがいたのかテレビが付けっぱなしになっているリビング。
いつも通りの、見慣れたはずの我が家の景色がソウタの目にはどこか懐かしく映っていた。
無理もないだろう。昨日の怪獣が現れた瞬間からヒロイックロボ、ファルガンのコクピットに乗り込んで実戦を経験し、さっきまでいた所は対怪獣防衛の本拠地であるガーディアン基地である。
非日常の連続から、この短い間で当たり前の日常をどこか遠い事のように感じつつあったのかもしれない。
「おかえりお兄ちゃん!怪獣にやられちゃったのかもって心配したんだよ!?」
そしてソウタが帰ってきた事に気付いて階段を駆け下りてきたマドカが、涙目になりながら飛びついてくる。よほど心配だったのだろう。
「電車止まったから、友達の家に泊まってたんだ」
当然ソウタの言い訳は嘘である。実際はガーディアンの基地に泊まっていたのだから。
「今度からそういうの連絡してよね?」
「ごめんごめん」
だが本当の事など言えるはずもなく、マドカの頭を撫でながらガーディアンの事は胸の内へとしまった。
「あ、今日は夕飯友達とファミレス行くから昨日のオムライス冷蔵庫に入ってるの食べといてね」
「わかった」
「何着て行こっかなぁー!」
そして元気を取り戻したマドカは、友達との食事会に心躍らせながら階段を駆け上がっていった。
「はぁ、疲れた……」
心身共に疲れ果てたソウタは、テレビを切ってソファに横たわり天井を見上げる。
「俺が、ヒーローに……か……」
突然ヒーローという選択肢を突き付けられる事になった彼。
だがいくら実戦を経験したとは言っても、まだ具体的な実感などない。
本当にヒーローになれるのか。自分なんかがなってもいいものなのか。そんな事を考えながら結局何も決められないまま、ソウタは目を閉じ意識は深い眠りの中へと沈んでいった。
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