11人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
同日、中東地域。
「まさかあれは……!」
とある非合法の武装組織の拠点で、見張りが双眼鏡を覗き何かを捉える。
軌道を描きながら低空を駆ける紅い流星。
その正体に気付いた瞬間、見張りの男は赤い光に呑まれて一瞬で蒸発しこの世から消滅した。
「敵襲だ!」
「迎え撃て!ガキ共を捨て駒にしてでも奴を落とせ!」
直後、敵襲を知らせる警報音が鳴り響き少年兵たちが配置につく中、地対空ミサイルが放たれる。
だが光はそれらを物ともせず突破し地上へと降り立った。
「どうしてヒロイックロボが……!」
その姿はここにあるはずのない存在、ヒロイックロボ。
夜の闇のような黒と、それを照らす月のような黄色の二色の機体は虫ほどの大きさにも見える生身の人間へと銃口を無慈悲に向ける。
「……ごめん」
鉄に囲まれたコクピットの中で、少女が囁く。
そこから先は、一方的な殺戮だった。
銃を向けてくる者も、逃げ出そうとする者にも容赦なく銃口を向け、放たれた光線は断末魔を上げる間もなく兵士たちを消滅させる。
そして連れてこられたであろう女子供や寄り添う男たちには傷一つつけず、まるで蟻でも潰すかのように大人の兵士だけを皆殺しにしていった。
「ひぃっ!?」
最後に残されたのは、ここまで敢えて生かされたであろう首領の男。
黒い機体は怯えるその男を拾い上げるとマニピュレーターで握りながら空へと突き上げる。
「た、助けてくれ!望みはなんだ、金か?女か?」
「幸せな人……」
「や、やめ……」
そして命乞いをする男の姿に軽蔑の目を向けながら、少女はそれをぐしゃりと握り潰してしまった。
「ヒー……ロー……?」
「……来てくれたの……?正義の味方が、やっと……」
平和を謳う正義に見放された少年少女たちは、希望に満ちたきらやかな目で見上げる。
手を血で紅く染めた、悪魔にも見える黒いヒロイックロボを。
しかし、その中に知るものは誰もいない。黒いヒロイックロボ、そしてそれを操る少女の内に秘められた闇の存在を……。
最初のコメントを投稿しよう!