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午後七時頃。日が暮れた夜道をソウタとマドカは二人で歩いていた。
「久しぶりだね、こうして二人で出かけるのも」
ソウタがヒロイックロボに乗り始めてからおよそ三ヶ月程。それからというもの、二人で過ごす時間は少なくなってしまっていた。
「仕方ないよ。忙しいんでしょ?最近」
「心配かけてごめん」
「生きて帰って来るなら文句ないよ?私は」
「そう言ってくれると助かるよ」
マドカとしては心配していないといえば嘘になる。だが彼女は信じていた。ヒーローが負ける筈はないと。そして、ウィズン襲撃の時に自分と学校の友達を守ってくれた兄は間違いなくヒーローであると。
「お父さんもお母さんも外国だし、私に家族はお兄ちゃんしかいないんだからね?」
「わかってる。死なないよ、絶対」
二人の両親は海外出張で遥か遠く。仕送りこそあるものの、ソウタが高校に入ってからはマドカとの二人で暮らしてきた。
親戚もまた九州という海を隔てた遠い場所に住んでいて顔も覚えておらず、マドカにとって今家族と言えるのは兄ただ一人なのだ。
「マドカを悲しませたくはないからね」
マドカを一人にしない為にも、負けるわけにはいかない。ソウタがそう決意する中、事は起きた。
『SYAAAAAA!!』
けたたましい咆哮を上げながら、再び怪獣が現れたのだ。
「怪獣!?」
光線ロボット怪獣スプラッシャー。
全高24m、重量620t。
全身に埋め込まれた水晶からシャワーのように無数のレーザー光線を放つロボット怪獣である。
「きゃあぁぁぁぁぁぁ!」
「怪獣だー!逃げろー!」
無差別に光線を放つ怪獣スプラッシャーから逃げ惑う人々。その流れに逆らい、ソウタは立ち向かう決意を固めた。
「お兄ちゃん……」
「大丈夫だよ」
そして心配するマドカを安心させるために手を握りながらソウタはスマートフォンを手にしてガーディアンと連絡を取り始めた。
「御法川さん!今現場近くにいるのでファルガンを送ってください!」
『すまないが今回はファルガンはオーバーホール中だ。それに……』
しかしソウタのファルガンは今オーバーホールの最中で、戦う事はできないらしい。このままでは街は守れない。焦るソウタに、御法川は諭すようにこう告げた。
『今日は大人に任せてくれ』
直後、空から怪獣の目の前に何かが現れ、瓦礫を巻き上げながら地面に着地する。それは背中に二門の大砲を背負った正義の赤鬼……ファルガノンだった。
「ファルガノン!?ということは……」
「ファルガノンの初陣だ!この戦い、勝利で飾るぞ!」
その機体に乗っていたのは、あのベテランパイロットの八木だった。
「行こう、マドカ。一緒に避難しよう」
「うん……!」
彼ならきっと大丈夫だろうと信じ、ソウタはマドカの手を引いて避難所へと向かう。
そして今、ファルガノンの初陣の幕が上がった。
「ライフルカノン!」
ファルガノンの先制攻撃。牽制にファルガンと同型のライフルカノンを放ち、スプラッシャーの動きを抑え込もうとする。
「バリアか!?ならば!」
だが突如その前に現れた光の壁が砲弾を阻み、防いでくる。所謂バリアだ。
ならばとファルガノンは取り出した大きな刃と鋼鉄の棒を連結させ、巨大な大斧として構える。
「ガノンアックス!」
対怪獣用重戦斧、ガノンアックス。ファルガンでは装備できないほどの重量を持つこの斧を軽々と振るい、ファルガノンはブースターを吹かして敵の懐へと突撃した。
「喰らえッ!」
『SYAAAAAAA!!』
一撃。重い一撃がスプラッシャーに叩き込まれ、衝撃が突き抜ける。
そしてスプラッシャーは吹き飛び空中で一回転しながらビルに叩きつけられ、崩れ落ちた。
だが直後、すぐさま起き上がりその瞬間全身の結晶体から無数の光線がファルガノンへと放たれた。
「光線か!?くっ……!」
咄嗟に構え、身を守るファルガノン。そこに光線が突き刺さり、視界を光が覆い尽くした。しかし……。
「ダメージ軽微……それにこのパワー!」
光が消える。視界が戻った時、八木がモニターを見渡すと表示されたダメージはごく軽微だった。外から見ても、装甲が熱で少し歪んだ程度の損傷。殆ど無傷と言ってもいいほどにダメージは見受けられなかった。
「とんでもない機体だ、このファルガノンは!」
コクピットの中で、自身の機体のその圧倒的な性能の前に八木は思わず驚嘆の声を上げるのであった。
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