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それからしばらく後、怪獣による火災の消化も終わり避難勧告が解除されてシェルターから解放された人々がこぞって出てくる。
その中に紛れてソウタとマドカもはぐれないよう手を繋いで外に出て夜空を見上げた。
「折角久しぶりに二人でのお出かけだったのに、散々だね」
「まあ、次があるさ」
「次……そうだね」
マドカの言うように、せっかくの二人での外食が怪獣のせいで台無しになるという散々な夜だった。だが決してこれっきりではない。生きている限り、時間はまだあるのだから。
「あ、そうだ!お金いっぱいあるなら買って欲しいものがあるんだけど……」
「何?」
「コートにワンピースに肌着でしょ?あとポーチに手鏡に……」
だが代わりにと言わんばかりにあれもこれもと欲しいものをねだるマドカ。
「分割で頼むよ」
「仕方ないなぁ」
流石にそんな数を一気に買うことは出来ず、戸惑いながらもソウタは分割して買ってやる事を約束した。
「ちゃんと全部買ってもらうんだから、絶対死んじゃダメだからね!」
「わかってるよ、マドカ」
「それならよろしいっ!」
つまり欲しいものを全て買うまでは少なくとも、ソウタは死ねなくなったというわけである。
これもまた、マドカなりのソウタに対する励ましである。だがソウタは、妹の容赦のないおねだりの費用に頭を抱えるのだった。
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