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第六話 久遠の夢
ファルガノンの一件から数日後。
「よう、ソウタ」
「ああ。なんだ、カズマか」
「なんだってなんだよ!?」
放課後の教室で、いつも通り話し掛けてきたカズマをソウタは適当にあしらう。日直の仕事を早く済ませてガーディアン支部まで行きたい彼に、今ここで雑談をするつもりはなかった。
「それよりさ、今日の用が済んだら飯食いに行かね?フウカの奴も誘ってさ」
「ごめん、マドカともう約束をしてるんだ」
「回転寿司だっけか。そりゃ仕方ないな」
そしてカズマは今日のガーディアンでの用事が終わった後にいつもの三人での食事に誘うが、生憎今晩はマドカと行き損ねた回転寿司に行く約束があった。
「ま、日直頑張れや。先行っとくから」
「わかったよ」
用が済むと、先に荷物を纏めて教室を後にするカズマ。
「あ、おつかれちゃーん」
「おつかれー」
直後、教室の前を通り過ぎたフウカとも挨拶を交わした。
中東での一件以降は、互いの仲も進展し学校でもフウカとは友達として話す機会が増えているのだ。
「俺もさっさと済ませて帰るか……」
後は日直の仕事が残るのみ。手早く掃除も済ませ、戸締りも確認して鍵を職員室に返したところで仕事は終わる。
「失礼しましたー」
そして職員室で一礼し立ち去ると、そのまま玄関で靴を履き替え校舎の外に出た。
「さてと、そろそろ行かないと……」
学校での用は済み、次はガーディアン。そう思って支部に向かおうとしたその時だった。
「…………」
「あの子は……」
ふと遠くに見えた人影。それにはどこか見覚えがあった。
白いワンピースに包まれた華奢な身体に、輝くような銀色の髪の少女。間違いなくそれは、ソウタの知る人間だった。
「ま、待って!」
慌ててソウタは、その姿を追いかける。心配してか、はたまた別の感情か。とにかく彼は、少女の事が放っておけなかったのだ。
「はぁ……はぁ……」
「ソウタ君……だったかな……。久しぶり……」
「クオン……」
追い付いて足を止めたその場所にいたのは、やはり彼の知る人物。中東でのテロや紛争で全てを失いこの国に戻ってきた少女、水無瀬クオンだった。
「せっかくだから街、一緒にどうかな」
なんの巡り合わせか、また会うことができた。この機会にと、ソウタは御法川にメールで今日はガーディアン支部には行けない旨を伝えてクオンを連れ、街の方へ向けて歩き出した。
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