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「ファルブラック及びファルガン、敵怪獣と交戦開始!」
一方その頃、ガーディアン支部の指令室も戦闘態勢に入りオペレーターがフリグラースとファルブラック、ファルガンの交戦開始を伝える。
「世界が、大きく動こうとしている……」
怪獣の急激な増加に近頃のファルブラックの活発化。ついにはそのファルブラックとの共闘。目まぐるしく変化する状況に、御法川は大きな変化の予兆を感じ取っていた。
「どうすんの、この意味不な状況!」
「ソウタがああ言うならファルブラックは味方だ!少なくとも今はな!」
またこの異常な状況の中、カズマとフウカはソウタを信じてファルブラックを味方と判断し行動を始める。
「ミサイルとキャノン装填!いつでも撃てるようにしておけ!」
「おっけー!」
これまでソウタの戦いを遠くでサポートしてきただけの二人だったが、今回はGキャリアーでの初の実戦になる。
一層気を引き締めて、カズマは操縦桿を握りフウカは火器管制の操作に入った。
「まずはライフルで牽制を!」
そしてファルガンが牽制にライフルで先手を打つ。
『GRAAAAAA!』
「効いてるのか……?」
吸い込まれるように命中する砲弾。絶叫を上げるフリグラースには効いているようにも見えるが、目立った傷は見えない。
「だめ、避けて」
「来る!?」
フリグラースの口の中が青白く輝き出す。咄嗟にファルガンとファルブラックが避けようとした直後、その口から勢いよく光線が放たれた。
「このッ!」
すんでのところで避け切ったファルガンはすぐさま銃を構え、反撃に出ようとする。
「弾が出ない!?どうして!」
だが、銃の故障なのか引き金を引いても引いても弾が出なくなってしまったのだ。
「やらせない」
ソウタを殺させまいと、ファルブラックが格闘戦を仕掛けようとする。
「くっ、これじゃ……」
だが怪獣の纏う冷気はファルブラックの稼動限界の温度を遥かに下回っていて、後退を余儀なくされた。
「さっきのは多分冷凍ビームあたりじゃない?直撃食らったビルは凍りついてるし、直撃受けてない銃も近かったから凍っちゃったんじゃ……」
フウカの言う通り、今の攻撃は絶対零度の冷凍光線。その一撃はビルすらも一撃で凍らせ、かすりすらしなかったライフルカノンすらも凍結させ故障させてしまったのだ。
「とりあえずドローン送って確認するぞ。操作出来るか?」
「訓練通りっしょ?余裕余裕!」
絶対零度の冷気を操る常識外れの怪獣フリグラース。相手が未知の領域の存在である以上、その影響を探るしかない。
カズマの指示で、フウカは飛ばした偵察ドローンを敵の近くに送り込んだ。
「ラスターブラッドガン」
そしてファルブラックもラスターブラッドガンで光線を放ち攻撃を仕掛ける。
だが熱の塊である光線も、絶対零度の冷気の障壁に阻まれ殆どが掻き消され、命中したところでかすり傷にもならなかった。
「ビームも温度を下げて弱体化……。厄介な相手……」
当たらなくとも近づくだけでライフル程度なら破壊されるほどの冷凍光線に、近づくこともできずラスタービームすら殆ど効かない冷気のバリア。
機械としての限界があるヒロイックロボにとっては、まるで無敵にも思える相手である。
「うっそ!」
「どうした!」
「あの怪獣の周りの温度、マイナス160℃もあるよ!あ、ドローン壊れた」
近づいた瞬間故障してしまったものの、測定できた敵の周辺温度はなんとマイナス160℃。
「ファルガンの耐えられる温度はせいぜいマイナス80℃……。あれじゃ近づけねぇぞ……!」
その温度は、ファルガンの防寒限界を二倍も下回っていた。この時点で、ファルガンのカタログスペックではフリグラースには近付く事すら叶わないという事になる。
「私が接近戦を仕掛ける。ラスターブラッドセイバー」
ならばとファルブラックは熱の剣であるラスターブラッドセイバーを手に、接近を試みる。
『GRAAAAAAA!!』
「そんなの、当たらない」
光の翼を広げ空を舞い、冷凍光線を躱しながらフリグラースに肉薄し、剣を振り上げるファルブラック。
だがその瞬間、目に見えて出力が下がり機体の表面が凍りつき始める。咄嗟にクオンは操縦桿を引いてフリグラースから距離を取った。
「やっぱり、この温度じゃ近づけない……」
マイナス160℃ともなると流石にファルブラックでも活動できないようだ。近づくことができず、射撃も弱体化させられる圧倒的な強さを誇る怪獣を前に八方塞がりだと思われたその時だった。
「寒過ぎて近付けない……。あっ」
「どうしたフウカ!」
「作戦、思いついちゃった。あんた、ミサイルを時限爆弾にして撃てる?」
「時限信管だな。そりゃできるが……」
ふとフウカがその攻略方法を思い立つ。それに必要なものは、時限信管のミサイルだという。
「よし!ソウタ、今からラスタービーム飛ばすから受け取って!」
「ラスタービーム!?効かないって言ってんだろ!」
「これでいいの!」
「わかった!」
効かないというのにラスタービームなどと正気を疑うカズマの声を押しのけ、Gキャリアーに積まれたバズーカを射出させるフウカ。
ソウタはそれを受け取ると、即座に展開させて肩に担いだ。
「ファルガン、ラスタービーム装着!」
「信じるしかない。彼らを……」
ファルブラックならばともかく、ファルガンがラスター装備を使うとなるとエネルギーの問題でそれが最後の一撃となる。
一見すると無謀な賭けにも見えるが、これまでも機転を利かせて様々な脅威を乗り越えてきた三人ならば勝算があるのだろう。そう信じて、御法川は指令室から彼らの戦いを見守る。
「ファルブラック、聞こえる?そっちにも作戦伝えるからちゃーんと聞いてて!」
「……うん」
「これからトレーラーに積んでるミサイルをありったけあいつに、取り囲むみたいに叩き込む!」
まずフウカの作戦の第一段階は、ミサイルでの飽和攻撃。時限信管は、近接信管では接近した時点で故障の危険がある為だろう。
だが時限信管で距離を取って起爆させたところで大したダメージは与えられない。
「もしかして……温度を上げる気か?」
そこまで読み取ったカズマは、ようやくフウカの狙いに気付いた。
「そそ。ミサイルの熱で温度を上げて、下がりきる前の一瞬に全力のビームをぶち込む!できそ?」
ミサイルは一瞬の間冷気を中和する為のもの。そうして温度が上がった一瞬に最大出力のビームを浴びせるという作戦だった。
「それしかないならやるしかない!」
「私も、付き合う……」
他に策がない以上、ソウタもクオンもフウカの作戦に乗る事を決める。しかし口で言うのなら簡単だが、この作戦には問題もある。
「多分爆発の熱も一秒もたないから、タイミングが大事になるけど……」
周囲の温度を上げた瞬間に最大出力の必殺光線を叩き込むという作戦だが、爆発の一瞬に頼る為タイミングが非常にシビアになるのだ。
「信じるよ。ラスタービーム、起動!」
「ラスターブラッドガン、フルバーストモード」
それでも二人は、成功を信じてビームのチャージを始める。
「チャンスは一回だよ!ミサイル、一斉発射!」
そしてGキャリアーが全てのミサイルハッチを展開し、内蔵されたミサイル全てを一斉に放った。
「5、4、3……」
それと同時に、タイマーを見ながらカズマがカウントダウンを始めた。
一秒、また一秒と時間が迫る中ビームのチャージも終わり、ソウタは呼吸を整え心を落ち着かせる。
「2、1……」
時は来た。一斉に爆発し、ミサイルの炎がフリグラースを包み込む。
「これで決める……!」
「いっけぇぇぇぇぇ!!」
その瞬間、二人は引き金を引きラスタービームが、ラスターブラッドガンが放たれた。
もしこれで倒せなかったらと、息を呑む一同。
『GRARARARARA!?!?』
直後、絶叫を上げるフリグラース。そしてそれは全身から光を放ち、次の瞬間大爆発を起こして砕け散った。
「勝った……勝ったんだ……!」
「やったぁ!」
「マジかよ……」
無敵とも思われた怪獣の撃破に歓喜の声を上げるソウタとフウカ。一方カズマは、まだ勝ったことが信じられない様子だった。
「ありがとう、ソウタ」
「一緒に行こうクオン!そうすれば……!」
その後、一言言い残し翼を広げて去ろうとするファルブラックをソウタは止めようとする。
「次会う時はきっと、殺してくれるよね」
「ダメだ!くそっ、動けよファルガン!」
だがペダルを踏んでも操縦桿を倒しても、ファルガンはぴくりとも動こうとしない。そしてコクピットに大量に出てくる警告表示。
実は離れて戦っていたとはいえ周囲の気温はマイナス80℃を下回り、ファルガンの限界を超えていたのだ。故に、ここに来て無理が祟り故障してしまったのだろう。
「信じてる。あなたなら、私に……棺の中で夢を見せてくれることを」
この戦いでクオンはソウタたちを認めた。彼らこそが、自分を呪いから解放してくれる存在だと。
「それがきっと……幸せな夢だって」
「ダメなんだよそんな風に考えちゃ!きっとそれ以外の道だって……!」
そんな生き方をしてはいけないと、ソウタは必死に説得する。
しかし今のファルガンでは止めることもできずファルブラックは空高くへと消えていった。
「なんで……なんでなんだよッ!!」
モニターを殴りつけ、悔しさを顕にするソウタ。本当に一番守りたいものをようやく見つけたというのに、結局何も出来なかった。
「こんなのじゃ……ダメだ……!」
そして彼は誓うのだった。今のままではだめだと、今よりずっと強くなる事を。
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