第六話 久遠の夢

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その後、ガーディアン支部の格納庫にて。 「あーあ、ダメだなこりゃ。フルメンテ確定だ」 「げぇ、徹夜確定じゃん……」 回収されたファルガンを目の当たりにして嘆く整備士たち。完全に動かなくなるまで壊れてしまったのだから無理もないだろう。 「おい、大丈夫かソウタ!」 「変な作戦やらせちゃってごめん!大丈夫!?」 「問題ないよ」 ファルガンはそのような状態とはいえ、パイロットであるソウタは幸い無傷。 無事を確認し合う彼らの元に、御法川が現れた。 「御法川さん……」 「今日もよくやってくれたね、三人とも」 今回の怪獣だが、あまりの強さに既にソウタたちとファルガンでは勝てない事も想定されてファルソードやファルガノンを含めた複数機での対処も準備されていた。 だがファルブラックの加勢もあったとはいえ、見事彼らは怪獣フリグラースを打ち倒した。その働きは既に、当初の御法川の期待を遥かに超えたものだった。 「俺……見つけました」 「見つけた?」 そんなソウタが見つけたというもの。それが何なのかを御法川は問う。 「これまでは身近な世界を守りたいと思って戦ってきたけど、その境界が曖昧で、そのせいで踏み切れないところもあって……」 身近な世界を守る。そう思ってこれまで戦ってきた彼だったが、それでもまだ曖昧なものがあり理由としてははっきりしていなかった。 「けど、やっとわかったんです。俺が一番、この手で救いたいものが」 だがようやくはっきりとした守るべきものをソウタは見つけた。それが何なのか、気づいたように御法川は言う。 「初恋、かな?」 「……はい。小さな頃から不幸という不幸を一身で背負って、満足に幸せも与えられずに生きてきた一人の女の子を……俺は助けたいって思えたんです。心の底から」 「君がそこまで言う相手は……」 ソウタにとって戦う理由として足るほどの守るべき相手。それに興味を隠せない御法川はもう一度尋ねた。 「水無瀬クオン。ファルブラックのパイロットです」 その答えは、彼を驚かせるには充分なものだった。 「なるほどね」 そして事情を聞いた御法川は、納得したようにそう頷く。 「個人的な理由ですみません」 「いや、いいんだ。むしろ君を選んで正解だったよ」 自分が想う少女の為に戦うという個人的な理由の為にファルガンを使う事に引け目を感じるソウタだったが、御法川の考えは逆だった。 「想い人の為。それ以上に人間が強くなれる動機はないだろう」 「ありがとう……ございます」 「決してその子をこれ以上不幸にするんじゃないぞ。生かすにしても、殺すにしてもだ」 「……はい」 クオンを救う為に戦う事を選んだソウタだが、それがこの先彼女にどのような結末を齎すのかはわからない。 だがそれが、決して彼女を不幸にする事はないようにと御法川はそう釘を刺すのだった。 「とまあ話しておいて早速ですまないが……」 クオンとファルブラックについては一通り話したところで、御法川は話を変える。 そこで告げられた言葉は、ソウタにとってはとても衝撃的なものだった。 「結城くん。君には、ファルガンを降りてもらう」 突然の宣告。その言葉に、彼はただ立ち尽くすことしか出来なかった。
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