第七話 究極の力

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そして帰りのタクシーの中。 「いやー、やってみたらできるもんだね!」 「あんまり調子乗るなよ?」 「わかってるわかってる!」 Gキャリアーでの初陣の大成功でやや浮かれているフウカ。カズマはそんな彼女を窘めようとするが、あまり耳には入っていない様子だった。 「ソウタ、大丈夫?」 「あ、うん。大丈夫」 そんな中でもフウカは、どこか思い悩んだ様子のソウタに気付くと声をかけ、ソウタは笑って大丈夫だと返す。 「御法川に何言われたんだ?」 「ファルガンを降りろってさ」 「はぁ?なにそれおかしくない!?」 だがカズマの問いに今日起こった事を話すと、フウカは即座に抗議の声を上げた。 「早い話、ファルガンじゃ性能不足だってさ。多分新しい機体を用意してくれてるんだと思うけど……」 「そのファルガンもぶっ壊しちまったからな」 「そんなら大丈夫だから気にしない気にしない!」 しかしその裏の事情を知ると彼女は、大丈夫だとソウタを励まそうとする。 (新しい機体に乗ればクオン、君を救い出せるんだろうか……) カズマとフウカは、ソウタがファルガンの事で思い悩んでいると思っているがそうではない。 ファルガンではない、新しいヒロイックロボ。その力があれば本当にクオンを救えるかという事だった。 「あ、そうだ!」 「どうした?」 そんな事はつゆ知らず、フウカはある事を思いつく。 「ソウタって今日妹と回転寿司行くって言ってたよね!」 「え、まあ……」 「それ、みんなで行こうよ!」 そして時間は夜の九時前。 「えっと……よろしくお願いします」 店員に案内され、回転寿司店のテーブル席に座る三人。またそこにはもう一人、マドカの姿もあった。 「ちょっと待て。お前の妹マジで可愛くね?」 「マドカちゃん超可愛い!うちの妹にしていい?」 周りが歳上ばかりで緊張している様子のマドカ。その可愛らしい姿に、カズマとフウカは思わず釘付けになる。 「あはは……」 マドカは幼さを残しながらもどこか大人びた雰囲気があり、その容姿は素朴でありながら美少女と言っても差し支えない程である。 自分の妹の可愛らしさが絶賛されているという状況に、ソウタはただ苦笑いしかできなかった。 「兄がいつもお世話になってます」 「俺たち二人ともお前の兄貴に命を救われてここにいるわけだから気にすんな。年上とか気にしないで友達と思ってくれ」 「そそ!てわけでお姉ちゃんともお友達になろー!」 「ありがとうございますっ!」 こうした形で顔を合わせたからには、カズマもフウカもマドカとは友達の妹ではなく、対等な友達という関係を望んでいた。 それもあって彼らがスムーズにマドカと打ち解けていく中、ソウタは寿司の注文をする為のタッチパネルに手を伸ばす。 「みんな、何か頼んで欲しいのあるかな」 そして最初にそれぞれどのような寿司を頼むかを尋ねた。 「俺えんがわで」 「うちはビントロ!」 「私はかにみそ軍艦にしようかな」 そんな彼に各々が頼んだネタは、どれも一風変わったものばかり。敢えてマグロやサーモンなどのメジャーなものではなく、スーパーの寿司では食べられないような物を選んでいた。 特にマドカは小学生らしくない選択である。 「じゃあ俺はこれで」 ちなみにソウタが頼んだのは赤貝。 こうして四人は、他愛ない雑談を交わしながら回転寿司での夕食を楽しむのだった。 「ふぅ、たくさん食べたぁー!」 そして夜10時頃。家に着いた途端にマドカは満足気にソファに倒れ込んだ。 「お兄ちゃんの友達、いい人たちだったね」 初めて顔を合わせた、兄の友人であり戦友の二人。始めは緊張していたものの、話してみるとマドカの予想以上に親しく接してもらい上手く打ち解ける事が出来ていた。 それと同時にマドカは、兄が付き合っていても安心出来る友人たちである事を確認し安心していた。 「あの二人がいたから俺はこれまで怪獣と戦ってこれたんだよ」 「そうなんだ」 実際マドカは知らないが、これまでもソウタは何度もフウカの機転、カズマの知識や行動力に救われている。その戦いの経験の数々は、充分二人を信じる理由に値するものに違いないだろう。 「で、お兄ちゃん。フウカさんの事は好きなの?」 だがそれはそれとして、同い年の思春期の男女が仲良くしているとなればやはり勘ぐってしまうもの。 「勿論だよ。大事な仲間だし、友達だからさ」 当然ソウタは、フウカの事が好きかと言われたら否定はしない。突然無茶に引き込んでしまったとはいえ、今では共に戦う仲間なのだから。 「そうじゃなくて、女の子として気になるかってこと!」 「……それは一人、別にいるんだ」 しかしマドカが期待していたような恋愛感情はフウカに対しては抱いていない。 「フウカさん以外にいるの?」 「ごめん、今は詳しくは話せない」 その相手とは、あのファルブラックのパイロット。どんな秘密を抱えているのかさえ知れない彼女の問題に、マドカを巻き込むわけにはいかなかった。 「でもいつか紹介するよ」 だがそれは今の状況での話。テロや紛争といった闇の世界で生きてきたクオンをいつかは光の世界へと救い出し、マドカとも顔を合わせられる日が来る事をソウタは信じていた。 「お兄ちゃんが好きな人かぁ……」 「あ、明日学校休んでガーディアンに行くから帰る時間がいつになるかわからないよ」 「うん、わかったー。それじゃおやすみー」 こうして今日もまた一日が終わる。 明日という日に、全てが変わる事など全く知らぬまま……。
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