第八話 そしてここから

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「これは……ファルガン? いや、違う……」  色も外観も、一見するとファルガンに見える。だが、外観にはライトグレーが増えて頭部には二枚のブレードアンテナが増設されるなど、所々ファルガンとの差異が見られるその機体に乗り込むと、ソウタは早速ファルガンと同じように起動させる。 『EX(エクス)ファルガン、通常モードから戦闘モードに移行します』  そしてモニターが点灯すると共に今、起動シーケンスが始まった。 『セーフティシャッター作動、モニター展開。エネルギーライン全回路接続。火器管制システムの安全装置を解除。データリンク開始。電圧正常。油圧正常。イジェクションシート、パラシュート共に正常。デュアルスーパーイオンバッテリー出力、190%で安定』  外観は確かにファルガンに近かった。だが表示されたパラメータは、ファルガンというよりファルブレイヴに近いような圧倒的な数値を示している。  リパルションリフターこそないものの、この機体が他のヒロイックロボとは別次元に位置している事は確かである。 『ウェルカムスーパーヒーロー。EXファルガン、戦闘モードで起動しました』 「エクス……ファルガン……」 de4109d8-4a37-45f0-8690-68f2832c4f93  過去の全てのヒロイックロボを超える、新たなるヒロイックロボの原点(ファルガン)。その名は、EX(エクス)ファルガン。 『その機体はファルガンの残存機をベースに、回収したファルブレイヴの使用可能な部品全てを流用して新たに組み上げた、君専用のファルガンだ。自由飛行能力こそないが、機体性能は既存の機体とは比較にならない最強の機体となっている』  ファルガンをベースに破壊されたファルブレイヴのパーツを組み込み、新たな機体として組み上げられた最強のヒロイックロボ。 『世界最強のヒロイックロボ……。その力、君が正しいと信じる事の為に使ってくれ』  ガーディアンのヒーローとしてではない。結城ソウタという個人として戦う為に与えられた新たなる力が今、起動する。 「飛ぶことはできない……。でも、事なら!」  目指すは空で戦うクオンの元。ソウタは全力でバーニアのペダルを踏みしめ、そして…… 「EXファルガン、テイクオフッ!!」 最強の力が今、夜空へと飛び立った。 「ほらカズマ! あれ!」 「あれは……ファルガン!?」  人々が逃げ惑う街から、カズマとフウカの二人もその姿を捉える。  そして直感的に分かっていた。それに乗っているのが、ソウタだということを。 「だめ、このままじゃ……」  フレアノドンの口から、紅い炎が溢れ出す。そしてその瞳に捉えたファルブラックへ向けて火球を放ったその時だった。  クオンが思わず目を瞑った時、辺りに爆音が鳴り響く。次の瞬間、目を開けた彼女の目に映ったのは爆炎の中から現れるEXファルガンの背中だった。 「ファル……ガン……?」 「助けに来たよ、クオン」  ついにクオン……ファルブラックと肩を並べられる程の力を手に入れた。  これならば、クオンを救う事もできる。そう信じて、ソウタはEXファルガンのライフルを怪獣へと向けた。 「ラスタービームライフル!」 『GAAAAAA!』  そして引き金を引いた瞬間放たれた光線は、フレアノドンの翼を掠めて動きを鈍らせる。  直後、EXファルガンの機体は地球の重力に引かれて街の中へと落下し始めた。 「翔べ! EXファルガンッ!!」  次の瞬間、ソウタがバーニアのペダルを踏むと再び機体は空へと舞い上がった。  ファルガンではなし得なかった芸当だが、パワーアップしたEXファルガンの性能ならば自由飛行とまでは行かなくとも推力だけで空を飛ぶ事も可能となっているのだ。 「行こうクオン! 一緒に!」 「うん……!」  肩を並べたEXファルガンとファルブラックは、共通の敵であるフレアノドンへと銃口を向ける。 「空中での機動力ならブラックの方がきっと上。私が回り込んでそっちに追い込む」 「そこを俺が食い止めるから、二人で一気に仕留めよう!」  そして作戦を決めると、二機は同時に動き出した。 「ラスターブラッドガン」  まずは空戦能力に優れるファルブラックが、ラスターブラッドガンを撃ちながら死角に回り込み追い込んでいく。  フレアノドンも両翼のバルカン砲で応戦するもそのような攻撃などファルブラックの前では豆鉄砲でしかない。クオンは軽々と機体を操り砲弾をかわしていく。 「どこに逃げても無駄」  フレアノドンもブラッドガンの光線をかわしながら飛び回るが、その動きはクオンの狙い通り。 「来た!」  その正面にいたのは、既に銃口をフレアノドンへと向けたEXファルガンだった。 「ここで食い止める! 行けぇ!」 『GAAAAAA!?』  フレアノドンは咄嗟に反応し避けようとするが時すでに遅し。ビームライフルから放たれた光線が片翼を直撃し、フレアノドンは地面へと墜落していく。 「一気に決めよう!」 「うん」  あとは街に落ちる前にトドメを刺すのみ。 「ラスターセイバー!」 「ラスターブラッドセイバー」  EXファルガンはラスターセイバーを、ファルブラックはラスターブラッドセイバーをそれぞれ展開しフレアノドンへと向ける。そして…… 「「ダブルラスターセイバーッ!!」」 『GAAAAAAAAAAAAAA!?!?』  二本の光剣にX字に切り裂かれ、、フレアノドンは絶叫を上げながら空中で爆散した。 「やったね、クオン」 「うん。あなたの街、守れて嬉しい……」  人々が見守る中、EXファルガンとファルブラックは夜の街中へと降り立つ。 「それじゃ一緒に行こう。妹がいるから、折角だし顔を見せて……」  そしてソウタは、クオンに一緒に行こうとEXファルガンで手を差し伸べる。しかし……。 「ごめんなさい。あなたとは一緒に行けない」 「え……」  ファルブラックはその手を跳ね除け、ラスターブラッドガンをEXファルガンへと突き付けた。 「決着をつけよう。あなたと私の出会いに……。そして、私の最悪の人生に……」  この日の夜は、まだ明けない……。
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