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『KAMAGIRAAAAAAA!!』
「くそっ、距離を取らないと……!」
ビュンビュンと繰り返しブレードを振るカマギラー。
一発振り下ろされる度に空気が裂け、ビルが割れる。
まともに喰らえば一巻の終わり。ソウタは落ち着いて距離を取りながら一発一発を確実に躱していく。
そんな中、突然ポケットの中の電話が鳴り出した。
咄嗟にソウタはカマギラーから一旦離れて携帯電話を肩に挟み込みながら操縦桿を握る。
『聞こえるかソウタ!』
「今は電話出来る状況じゃないんだ!」
電話の主はカズマ。相手にしていられないと切ろうとするが、彼の口から告げられたのは勝利の鍵となる重要な事だった。
『そいつの弱点、多分両手の刀の側面だ!横からキツイ一発ぶち込めば折れるんじゃないか!?』
「そうか!」
そう言われてソウタはカマギラーの両手の刃の根元を注視する。するとそこは、一つの球体関節で刃を保持しているだけの脆弱そうな構造をしていた。
この瞬間から彼の頭の中にはある可能性か浮かび上がる。
時間稼ぎだけではない。
“勝てる”という可能性が。
逃げるのをやめ、一気にカマギラーの懐に潜り込むファルガン。
「はぁっ!!」
そして掴みかかると拳を握り、思い切り刃の側面を殴りつけた。
『KAMA!?』
「折れた!」
分解する左腕のブレード基部。
カマギラーが咆哮を上げて仰け反る。
その隙にファルガンは落ちたブレードを拾い上げ、剣のように構えた。
「これで武器も一対一だ!」
これで条件はほぼ対等。あとは戦って倒すのみだ。
「せい!やぁぁっ!!」
振り回される両者の刃が、ガキンガキンと音を立ててぶつかり合う。
拮抗する両者の力。だが先に勝機が訪れたのはソウタの方だった。
『ファルガン!これより30秒後に送信した座標に必殺武器を投下する!使ってくれ!』
「了解!」
報せと同時に一気に肉薄し、刃を右胸に突き刺す。
刺さった刃が邪魔で振りおろせないカマギラーに再び掴みかかり、背負い投げを叩き込む。
直後、空から投下された巨大なバズーカ砲が姿を見せた。
「こいつでとどめだ!」
すぐさまバズーカを受け止め、構えるファルガン。
ソウタはコクピットのスコープを展開させ、照準マーカーの中心にカマギラーの姿を捉えた。
「ラスタァァァァ!ビィィィィィィムッ!!!!」
引き金を引いた。
視界を覆い尽くさんばかりの光が放たれ、機体が反動で押し戻される。
そして放たれたビームはカマギラーの姿を包み込み……
『KAMAGIRAAAAAA!?!?』
光が止んだ途端、絶叫と共にカマギラーは跡形もなく爆散した。
「勝った……。勝ったんだ……!」
爆炎に背を向け、佇むファルガン。
これは、ヒーローが去った先の未来に現れたもう一人のヒーローの物語。その始まりである……。
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