第二話 閃光の騎士

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第二話 閃光の騎士

『先日の怪獣襲撃事件ですが、情報によると撃退したのは市内の高校生の少年とのことです。勇気ある行動を示して多くの市民を守った少年に、多くの称賛の声が』 「これ、俺の事……なんだよなぁ……」 翌日、ガーディアン関東支部。 ソウタはロボット怪獣カマギラーとの戦いの後、一時的な措置として個室に軟禁され一人テレビに目を向けていた。 とはいえ内容は昨日の戦いの事で、彼が戦って多くの命を救った事を持ち上げるような内容ばかりで気分は落ち着かない。 中には人々の平和を守る為には身の危険も厭わない勇者のような少年だという話も出ているが、実際は自分たちが助かる為にやむを得ずした事であって見当違いもいいところである。 「落ち着いたかな、ソウタ君」 そうしてテレビを見ていた彼の元に、男が現れ声をかけた。ガーディアンの総司令官、御法川ケンジである。 「結論から言おうか。会議の結果だが、君はお咎めなしということになったよ」 彼が報告したのは、ソウタの処遇が無罪放免になったということ。 その後の説明によると、幹部たちからは“軍用兵器”であるヒロイックロボの私的利用で処罰するべきという声も上がっていた。 だがそもそもヒロイックロボの区分が軍用兵器ではなく災害処理用の機械である事や、無断使用を禁じて罰する規則が存在しない事などからお咎めなしとなったのだという。 「そうですか……」 「僕個人としては、君にはとても感謝しているんだ。名古屋の件の直後を狙われたというのもあって、君が勇気を振り絞って戦ってくれなければ被害はもっと拡大していただろう」 それは別として、御法川個人としての感謝も告げられる。 カマギラーの一件は名古屋の怪獣襲撃の影響で対応が遅れており、ソウタが戦わなければ大惨事もあり得ただろう。 とても個人の感謝などで済ませられる話でもないが、それでも最大限の感謝を伝える為に彼は頭を下げる。 「死にたくなかっただけですよ、俺だって」 「それでもだ。あの時君は間違いなく、他の誰よりもヒーローだった。胸を張ってくれ」 例えどんな理由であっても、あの時何百何千人もの人々を守り抜いた。その事実に変わりはないのだから。 「こんな時間だ。君の友人も待たせているし一緒に昼食といこうか」 その後、食堂にて…… 「ガーディアンの総司令官と、昼飯……」 御法川を前にして、緊張に震えるカズマ。 「凄い人なの?このおっさん」 どうでもよさそうに彼にそう訊ねる少女。 まるで対極的な構図である。 「おいおま!し、失礼しました!」 「構わないよ。でもおっさんはやめてほしいな。これでもまだ30前半なんだ」 あまりにも直球な少女の発言で、代わりに頭を下げるカズマだが御法川は気にする様子もなく笑って年齢を明かした。 総司令官の割には若々しい彼だが、年齢もどうやら相応らしい。 「まずは自己紹介といこうか。僕は御法川(みのりかわ)ケンジ。ヒロイックロボを運用し、悪のロボット怪獣と戦うガーディアンの総司令官だ。といっても堅苦しいのは無しで頼みたいな」 そして自己紹介。 御法川は友人のような気さくさでそう述べる。 「ま、真宮カズマです!よろしくお願いします!」 だがカズマはやはり緊張が解けず、背筋を伸ばしてガチガチの様子。 「上がりすぎっしょ。あ、うちは九条フウカだよ。よろしくー!」 (ギャルだ……) 一方パーマのかかったポニーテールと、スパッツをちらりと覗かせるミニスカートが特徴の少女……フウカは歳上相手で初対面とは思えない程の馴れ馴れしさで挨拶を済ませた。 「君はもしかしてあの時の……」 「あそこで怪我してたのうちだよ。あとあのダッサイカマキリ怪獣の弱点見つけたのもあ・た・し!」 ソウタは気付いた。 フウカが、昨日道で倒れていてカズマに任せたあの少女だという事に。 そしてカマギラーの弱点を発見したのがカズマではなく彼女だったということをここで初めて知るのだった。 「ありがとう。君のおかげで助かったよ」 「べっつにー?あんなの余裕だし」 礼を言うソウタに、あれくらい余裕だとアピールするフウカ。だが少し頬を赤らめていて、どうやら満更でもなさそうな様子だ。 「あ、俺は結城ソウタです」 その流れで忘れかけていたのを思い出し、ソウタも自分の名前を告げる。 「結構可愛いよね。童顔で」 「気にしていることを……!」 そして真っ先に反応したのはフウカ。といっても気にしているのは顔だが。 実際ソウタの顔つきは女っぽいという程でもないが少し中性的な童顔で、格好良いというよりは可愛らしいという言葉の方が似合うだろう。 「そいや九条さんってどこ高?」 「北高。一年」 「俺らと同級生じゃねーか!別のクラスか?」 「マジで!?すっごい偶然!」 「お待たせしました。ソースカツ丼になります」 三人が同じ学校の同級生だということもわかったところで、御法川が頼んでいた食事を従業員が持ってきた。 ソースがたっぷりとかかった、揚げたてのソースカツ丼だ。 「ここの食堂のソースカツ丼が僕の大好物なんだ。安いし何より美味い。勿論奢りだから是非食べてくれ」 「いただきまーす」 御法川一押しの一杯。その味は…… 「美味しい……」 「サクサクでいいな。ソースも甘辛で飯が進むし」 「キャベツ入りなのも嬉しいかも」 甘辛い特製ソースが沢山かかっていながらもサクサク感が損なわれていない肉厚な豚カツ。 そのサクサク感と噛み合うもち麦ご飯。 そして口の中の油のしつこさを抑えるシャキシャキのキャベツ。 充分それらはソウタたち三人を満足させるに足るものだった。 「ガーディアン関東支部の食堂自慢の一品さ。これにビールでもあれば完璧なんだけど今日は我慢しておくよ」 「やっぱおっさんじゃん!」 これを掻き込みビールで流し込むのが御法川の夜の日課なのだが、まだ昼な上に初対面の未成年も連れている今日という日は自重する事にしていた。 「ごちそうさまでしたー」 なかなかにボリュームのある一杯だったものの、無事全員完食。 食器を返却口に返したところで御法川は三人を呼び止める。 「三人ともちょっと話があるんだけど、いいかな」 「話?」 「ここじゃなんだから、小会議室を借りようか」
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