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第三話 黒のヒーロー
ファルガンで戦う事を決めてから一週間が経ったこの日の朝。何気なくテレビをつけたソウタは何やら物騒なニュースを目にする。
『三日前、中東で活動していた非合法の武装組織が一夜にして壊滅したとの情報が……』
「なんだか物騒だなぁ」
近頃よく流れる武装組織の壊滅を報せるニュース。ちょうど一週間前にも同じようなニュースが流れていたが、それ以前にも何度か報道されていた。
その全てに共通するのは、壊滅したのが誘拐した子供を少年兵として使うなど非道な行いをしていた組織だという事。少年兵や被害者の大人以外の幹部や兵士らが一人残らず殺害されていた事。そして、攻撃には一切実弾が使われていない事である。
ネットではヒロイックロボの必殺技であるラスター装備によるものであるという説が有力視されており、それに伴い様々な憶測が飛び交っているが詳細は未だ不明となっている。
「おはよっ!お兄ちゃん!」
「おはよう、マドカ。トースト焼けてるよ」
「ありがと!」
ランドセルを背負って階段を駆け下りてくるマドカ。それに気付いたソウタはテレビの電源を切るとトースターから食パンのトーストを取り出して皿に乗せマドカに渡した。
「そういえば俺バイト始めるから、前よりは帰り遅くなるかもしれないけど大丈夫か?」
朝の食卓。トーストにマーガリンを塗りながら、ソウタはガーディアンの事は伏せてアルバイトを始めたという事を伝える。
「私は大丈夫だけど……お兄ちゃん」
「どうしたんだ?」
「そのバイトってもしかして……ロボットに乗って戦うの?」
だがマドカは気付いていた。ソウタのしようとしているアルバイトというものが何を意味するのかを。一週間前にウィズンと戦っていたファルガンのパイロットが兄だということにも気付いていたのだから、そうした考えに行き着くのは当然の事だろう。
「気付いてたんだ」
「なんでそんな……」
「最初は偶然だったんだけどさ。けどあの怪獣が出てきた時、マドカを守らなきゃって思って……」
そしてソウタは明かした。この前の新ヶ浜での怪獣事件の際にファルガンに乗り込んで戦った高校生が自分の事だということ。その事が評価されてガーディアンの総司令官にスカウトされた事。また先週ウィズンと戦った機体の片方も自分で間違いないという事を。
「危ないことだってわかってるよね?」
「わかってる」
「頑張ってね、お兄ちゃん」
「ああ」
全てを聞いても尚、マドカに兄を止めるつもりはなかった。遊びのヒーローごっことは違う危険な事だとわかっているのならだが。
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