金の記憶

今、僕は

　学生時代に一緒に暮らすタイミングもあった。でも香奈の大きな立体作品はどうしても場所を取ってしまう。香奈の作品たちと一緒に住むのは無茶な話だった。

あの時ちゃんと考えてたら、違う未来もあったかもしれない……。

香奈のLINEをどう断ろうかと考えていると、香奈から次のメッセージが入った。

＿＿今やってる先輩の自主映画、早く観に行かないと今月中に終わっちゃうよ。

あっ、

「………そうだった」

僕のいる映画や演劇業界はまだまだ縦社会で、先輩との約束は守られなければならない。
これは疲れてても面倒でも香奈に会わなきゃならない正当な理由になった。

なんだか僕はほっとして、香奈にこう返した。

＿＿２週先の日曜日、新宿のいつもの喫茶店に14時はどう？

＿＿了解。