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記憶はここで終わりのようだった。僕は泉のほとりに連れ戻された。
「これが金の記憶です」
「はい?」
僕はぽかんとしてしまった。
忙しい日々のなかで、香奈との出会いの記憶などきれいさっぱり忘れていた。
「これが金?」
「はい。あなたがなくしたのはこの金の記憶ですか?」
だいたい今のいままでなくしてたのに、なんの問題もなかった記憶なのだから、はたしてこれが「金」でいいのだろうか?
唐突な展開について行けず、惚けていた僕にヘルメスは続けた。
「それでは、あなたがなくしたのは、こちらの銀の記憶ですか?」
ヘルメスは今度は左手をさしだした。
左手の上には、また別の光の空間が広がっているようだった。
「ちょっと、待って待って待って!」
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