金の記憶

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 気持ちよく進めようとしていたヘルメスを(さえぎ)って僕はたずねた。 「銀の記憶ってなんですか? やっぱり僕が忘れてしまっている香奈との昔の記憶ですか?」  ヘルメスはコクリと頷いた。 「だけど僕がさっきなくしたのは、金でも銀でもなく普通の、今日の記憶…ですよね?」  ヘルメスはまたまたコクリと頷いた。 「あのー、落っことしてしまった僕がいけないんですが、すみません、さっきなくした僕の普通の記憶をぜひ、拾ってきていただけないでしょうか?」  するとヘルメスは、僕の気持ちなんか放ったらかしで、ニッコリ笑って言った。 「正直者にはご褒美に、金と銀と普通のと、すべての記憶をあげましょう」
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