雀夜

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まるで初めてのセックスみたいに──俺の体が震えている。だけど不思議なことに、初めての相手である父親の顔は思い浮かばなかった。  代わりに、俺の頭を支配していたのは。 「雀夜ぁっ……、もっと、来て……奥まで挿れて……」 「がっつくな。……俺だって締め付けられて痛てぇんだ」  見ると本当に雀夜が眉根を寄せて険しい顔をしていたから驚いた。同時に、痛みを分かち合ってるんだと思って切なくなる。  ゆっくりと、だけど確実に、雀夜のそれが俺の中に入ってくる。 「んぅっ……」  腰が密着する感覚があった。俺の上で、雀夜が深く息をつく。 「……なるほどな、お前が人気な理由が分かった気がするわ」 「あっ、あ……」  急に雀夜の腰が前後しだして、俺は自分の足から手を離し、雀夜の肩に移動させた。  奥深くを突かれる度に、喉から甘ったるい声が漏れる。 「あ、ン……! 雀夜、気持ちいっ……」 「奥か、それとも手前か?」 「ふあぁっ……全部、気持ちいぃっ……」 「淫乱」  どう言われようと構わない。俺にとってセックスは空気と同じで、それがなくては生きていけない。快感を得るためなら何にだってなってやる。……これじゃ空気じゃなくて、麻薬だな。 「あ、あっ……あ、すげっ……!」 「エロガキ、もっとエロいこと言ってみろ」  雀夜の腰が容赦なく激しく打ち付けられる。俺は喘ぎ悶えながら、途切れ途切れに言った。 「ふ、あっ……もっと……突いてっ! 雀夜の、太くて長いヤツでっ……俺ん中、ガンガン突いて……犯してっ……!」 「いつも男にハメられてそんなこと言ってんのか?」 「い、あ、言ってなっ……」  むしろそんな台詞を本気で口にしたのは初めてだ。体の中の欲望が細胞レベルまで集まってきて、俺の喉から懇願の声となってそのまま飛び出してくる。俺のプロ根性は、雀夜の手によってあっという間に剥がされてしまったのだ。そんな気がした。 「桃陽、分かるか? お前触ってねえのに、イきそうなくらい勃起してるぞ」 「だって、あぁっ……! 雀夜が、いっぱい俺の中、擦るからぁっ……!」  物凄い勢いで俺のそこから出入りする雀夜のそれだって、俺に負けないくらい硬い。ゴム越しでも分かる。雀夜も、感じてるんだ……。  俺は意識朦朧の中で雀夜の首にしがみ付き、突き上げられる度に弾けるような声を漏らしながら懇願した。 「俺のも擦って、扱いて……。あっ、もう、イかせてっ……」 「いいぜ。溜まった分しっかり出せよ」  腰の動きはそのままで、荒々しく、雀夜の長い指が俺の屹立したペニスに絡み付く。 「ふあぁっ、あ……ごめん、もう無理っ、雀夜っ!」  ほんの少し扱かれただけで、途端に余裕がなくなってしまった。それでも雀夜の手と腰は止まらない。 「い、イくっ、やあぁっ……!」 「……なんだ、もうイったのか。早すぎんじゃねえの」 「だ、だって……ずっと焦らされてたから……あぁっ!」 「もう少し俺に付き合え」 「う、んっ……あっ、あ、あぁっ」  それから少しして、雀夜が俺の体をぎゅっと抱きしめて動きを止めた。 「くっ……」  雀夜の先端から白濁した精子が放出されるところを、頭の中で想像する。 「……気持ち良かった?」 「まあまあだな……」  呼吸を整える雀夜を見つめながら、俺はほんの少し頬を赤くさせて言った。 「俺、こんなに乱れたの初めてかも……」 「ガキにしては素質あったみてえだし、これくらいすぐに慣れるだろ」  俺の言いたいことは伝わっていないらしい。雀夜は俺の上から体をどかして、ベッドに仰向けになりながらゴムを外している。 「あんまり出てないね」 「昼間、仕事で出してきたからな」 「そっか、仕事でセックスするんだもんな」  相手はどんな男なんだろう。どんなプレイをするんだろう。俺が今日されたみたいな恥ずかしいことを、その人にもするんだろうか。  嫉妬まではいかないけど、なんとなく嫌な気持ちになった。 「そんで俺は、いつからそっち行けばいいの?」 「早ければ早い方がいい。この店はいつ辞めるんだ」 「来週は予約いっぱい入ってるから……今日この後にでも店長に言って、予約分が終わったら、移れると思う」  雀夜が起き上がり、煙草を咥えながら言った。 「客との普通のセックスじゃあ、もう物足りねえだろうな」  俺もそう思う。心の中で頷いた。
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