気持ちのカタチ

＊

翔馬の球を俺は何度キャッチしただろう。

小さな頃から互いに野球を通して成長してきたけれど、これで……最後。

甲子園準決勝、試合は9回の裏。ランナーが2塁で待機してるが。おそらくこの一球で試合は終わる。頭から止め処なく流れる汗がキャッチャーマスクさえも伝って乾いたグラウンドに染み込むのをピッチャーである翔馬へサインを送った指先の下、スローモーションの様に目に入った。

勝ちに執着していた俺の気持ちは今、正直本心とは言い難い。

まだ、もう一球……もう、一球。
いつか終わりが来るとわかって居ても。

応援の声が鳴り響いたマウンド上が一瞬無音になった様に感じたと同時、翔馬が振りかぶって投げた球は一瞬にしてドスンッと重たい音と共に俺のミットへと吸い込まれた。超が着く程のストライク。バッターはバットを振る事さえ出来ずに唖然としていた。

「3 ストラーーーイクッ！」

審判の声と共に歓声が沸き起こった。

俺たちの夏が終わった。

60.6フィート先に居る翔馬を俺はしっかりと目に焼き付けた。