回想、その距離60.6フィート

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回想、その距離60.6フィート

気がついた時には病院のベッドの上だった。 特に痛みを感じては居なかったが、右上の頭に違和感がある。 何があったんだっけ…… ふと点滴の刺さった腕の先、自分の手のひらに重みを感じて視線を落とした。 「翔馬!?」 翔馬がパイプ椅子に腰掛け、ベッドに上半身うつ伏せになったまま俺の手を握って居た。 「翔馬?」 再び声をかけてみた。それでも反応が無い。寝ちまったのか? うつ伏せで顔は良く見えないが、つぶった瞼と睫毛が可愛い。改めて観察すると、男の割に睫毛は長くて密集している。だから目元の印象が強いんだよな……翔馬の寝顔に思わずニヤける。頭に傷があるのか、表情を動かすと筋肉や皮膚が引っ張られる感じがして少しズキズキした。 こんな状況だけど最後にラッキーじゃん?翔馬の手を握れて、しかも翔馬から……神様からの卒業祝いかぁ、なんて柄にも無くロマンチックな事を考えて俺も目を閉じた。 ケガはどの程度のものなのだろうか。 そもそもなんで……ボールが頭にヒットした訳じゃないとしたら、スイングした空振りのバットが頭上にヒットしたか…… 記憶が飛んでるのは試合中頭痛が走った時の一瞬だけで、他の事はちゃんと覚えている。俺は翔馬との今までの出来事を思い出し始めた。 出来るだけ長くこうして居たいと握った手にチカラが入らない様にしたけど 実際上手く出来たかは、わからない。
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