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告白と体温
「なんで戻って来たんだよ話しの途中ったってわざわざ今夜来なくったって」
「だって……すんげえモヤモヤすんだもん。甲子園終わってから山ピーやけによそよそしいし、話かけようと思っても話かけんなオーラ出してくるし、おまけに近づくなオーラもビンビンだし」
「や、それは……」
言葉につまり沈黙が続いた。
「こうでもしないと山ピーと話しもできねーじゃん、なぁどうして?俺何か気に触る様な事した?」
「……」
俺の顎下にピッタリ翔馬のおでこがくっついてて。その問いかけはダイレクトに俺の胸辺りに振動して熱がこもる。会話よりも、この状況が気持ちを掻き乱す。ふざけてプロレス技とかならかけた事あったけどこんなに近くでこんな体制で居るとか……色々と無理。変な事を考えない様に俺は別の事を考えた。
「何も言えないって事は山ピーにとってはどーでも良いって事だよね……」
「そんなつもりじゃ……お前さ、これからプロでやってくんだぜ?んな事考えてる暇じゃねぇだろ」
少しキツイ言い方になってしまい、慌てて補足した。
「まぁ、翔馬は凄腕のピッチャーだし変化球もスゲエし即戦力になるんだろうけどさ」
「そんな事今話してるんじゃない……それに山ピーは全然わかってない。俺の球打てるバッターなんか沢山居るだろ。それよりなんで打てないんだろうって思った事ない?それってさ、山ピーがくれるサインのおかげなんだよ。山ピーが賢いキャッチャーだから、バッターは惑わされて弄ばれるんだ」
「そ、……そんな風に思ってくれてたのか」
「当たり前じゃん。山ピーは自分の実力、何もわかってない!ってさ、野球の話ししに来たんじゃなくて……なんで俺を避けるの?進路だって聞いても話してくれなかったし。山ピーにとって俺って何だったのかな。野球通してしか一緒に居たく無かったのかもって……それならそもそも友達としてさえ認識されて無かったのかなって……それなのに、やっぱり今もこうして山ピーはやっぱ優しいし、あったけぇし。俺、もうどうしたら良いか……ぜんっぜんわかんっっ……!!」
身体が先に動いてた。自分でも信じられない。強引に顎を引き寄せて俺は翔馬の唇に自分の唇を重ねていた。なにかプツンと糸が切れて……年月をかけて少しづつ暑くなった壁はあっけなく決壊した。
キスの仕方なんかわからないけど本能のまんまに翔馬の口の中に舌を這わせる。気持ちよくて、優しくしたいのに、めちゃくちゃにもしたくて。暴走した本能に自身のコントロールが効かない。キスと言うか噛み付くっていうか……翔馬の舌に自分の舌を絡めて口の中じゅう舐める。唾液が混ざり合ってヤラシイ音になり、今にも唾液が垂れそうだ。もっと……舌を更に奥へ突っ込もうとした時、翔馬に顎を押しのけられて我に帰った。
暗くてもわかるほど赤面した翔馬が下まぶたいっぱいに涙を溜めていた。
「ご、ごめん」
「山ピーのバカやろ。俺の初キスなんだと思ってんだ」
「ご、ごめんっ」
誤魔化すにも無理が有る。俺は諦めて想いを吐き出した。
「俺、翔馬の事…ずっとそういう風に想ってた……もう、ずっと前からお前が好きなんだ」
「っ……」
胸ん中にあった大きな鉛みたいに重たいものを吐き出してスッキリとは言えず、驚いた翔馬の顔と沈黙が胸を締めつける。たまらなくなって言葉を被せた。
「こんな事女の子に言われたいよな。さっきのキスは……男同士だし、ノーカンだろ?」
「山ピーほんっとバカなの?順番めちゃくちゃじゃんか……けど俺だって」
今度は翔馬が俺の唇にちょこんとキスをした。
「こういう意味で、山ピーが好きかも」
う、、、嘘だろ………?
「山ピーに嫌われたら俺もう死ぬし……避けられてからはもう何にも手につかなくて……これってそうだよな、こ、恋?そっか恋なんだ!」
見慣れた翔馬の笑顔にはにかんだ表情が混ざって。可愛良すぎだろ。
「やべ、恥ずかしい。山ピー、好きだよ。俺お前が好き。へへ何回でも言える」
「俺も……めちゃくちゃお前が好き。好き過ぎて。な、キスしてい?」
「さっきは何も聞かなかったくせに」
「ごめん」
「でもね、俺も。したい」
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