Ichi

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「うわ、おれもテキーラ入りだった!」 「っくそ、ああ゛、喉やべぇ!」  或斗が喉と胃を押さえるのと同時に、他の仲間も次々と音をあげた。  涼しい顔をしてるのは、古賀と、準備をした仲間だけである。  胃に注がれたアルコールは、体中の血液を沸騰させていくかのように熱を持ち、或斗はじわりと冷や汗をかき始めた。  それから、クラぁ、と眩暈もしてきて、思わず隣に倒れこみ古賀の腕に(すが)った。 「こが、せん、ぱ……」 「んー? 初めてのお酒、どう? 真っ赤になっちゃって可愛いねェ」  古賀の琥珀色の瞳が或斗を写して細まる。  細くて冷たい指先が、猫を撫でるように或斗の顎をなでなでと摩った。  ぐわん、ぐわん、とあたまがゆれて。  ゆれて、ゆれて、ちからがぬけて。  或斗は熱い息を吐きながら、身体を小刻みに震わせた。 「ちょ、てめぇ!  こんなん聞いてねーよ」 「ハズレの確立高すぎ! ふざけんな!」  お酒に慣れていない或斗とは逆に、他の仲間たちはアルコールを摂取して一気にテンションが上がっており。  ぎゃははは、と馬鹿笑いをしながら盛り上がっていた。 「テキーラ入りがひとつだけ、なんて言ってねーし。『どれかがテキーラコーク、他はただのコーラ』って言っただけだっつーの」 「うっわ、めっちゃ卑怯、草生える~!」 「ま、古賀先輩の指示だから許せって」  準備した仲間が、悪びれる様子もなく古賀の名前を出すと、「しかたねぇなー」と言いながら、それもまた笑い話になっていく。 「ったく、お前らはいつもやってから大丈夫だろォ? 見つかる前に水で薄めとけよ」  くつくつとおかしそうに笑う古賀の、その振動が或斗を揺らした。  もうチカラが入らなくて、頭もまわらなくって。  みんなの会話は聞こえているのに……頭に入ってこない。 「或斗はハジメテだったもんねェ。だァいじょうぶ、やさしい先輩が介抱してあ・げ・る・か・ら」  そう言った古賀の指先が、或斗の緩いネクタイをしゅるり、と簡単にほどいた。続けて、シャツのボタンを慣れた手つきでひとつずつ外していく。 「や……こ、が……せ……」 「熱いだろ? 脱がせてやるよ」  あっというまに前が(はだ)けて、白い肌が露出した。  わき腹をツツツ……と撫でられれば、或斗の体はビクリと反応して。声を殺して震えた体に、周りは盛り上がっていく。 「恥ずかしがる余裕もないくらい、()くしてやるよ。さ、口あけてみ?」  ぼーっとしたままその指示に従うと。  半開きの口に、透明なビンが突っ込まれて……。  「あっ」と思うと同時に。  透明な液体が、口から溢れるくらいそこに注がれた……。
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