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ハジメテは朝比へ捧げると決めていたのに……。
こうも簡単に奪われた挙句、その快感から抜け出せなくなって……何度も何度も行為を繰り返す。
こんなの、ただの浮気だ。
そうわかっているけれど、古賀の言葉は甘い。
甘くて、ずるい。
「無理矢理はしねェって。嫌ならちゃんと言えよ」
古賀はそう囁きながら、ゆっくりとグレアを或斗に注いでいく。
琥珀色の瞳から注がれるグレアは、心の奥が溶けてしまいそうなほど熱くて気持ちいい。
心も身体もとろとろに蕩けて、そうなると、或斗は考えることを忘れた。
考えることを放棄して及ぶ行為は、スゴク気持ちよくて。
ただただ快感に溺れていく。
「なんで朝比先輩ってば、或斗に手ェ出さなかったんだろォな」
仰向けになった或斗の腰を掴みながら、古賀がそう言った。
でも、ずんずんと繰り返されるピストンの動きに、或斗はただ喘ぐことしかできなくて。
「アハ、もう聞こえてないのか。カワイイなァ」
答えられなかった。
いや。
答えるもの億劫な程……古賀との行為に夢中になってしまっていた。
夢のような行為を終えて、ふと我に返るのは帰宅後だ。
なんてことをしてしまったのだろう、という後悔と、朝比に対する罪悪感が或斗の胸をギュウっと苦しめた。
浮気なんてダメだ。
もうやめよう。
やめなくちゃ。
今ならやめられる。
そんなことは分かってた、でも……。
寂しさを埋めてくれる温もり、甘い言葉。
タバコのメンソールの匂い。
すべてを忘れる程の快感、未知の行為。
新しいものをくれる古賀に、いつのまにか……或斗の心は、揺れ動いていたのだった。
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