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San
「ごふっ、ごほっ、ごほっ」
「なァに吐いてんだよ。飲めんだろ?」
「う、ぅぅ~…がはっ」
チカラの入らない或斗を仰向けに倒し、その上に跨ぎ馬乗りになって身動きを封じた。
その体勢で、何度も何度も口にビンを突っ込んで酒を飲ませようとしたけれど、或斗はほとんど吐き出してしまう。
酒と一緒に涙と唾液をダラダラと垂らし、情けない泣き顔を懸命に腕で隠そうとしていた。
「あのさァ、ちゃんと飲んでくれないともったいないんだけど。酒だってタダじゃないんだよねェ」
朦朧としながらも酒を拒む或斗に苛立ちを表すと「ごめ、にゃ、は、い、ゆるひ、て……」と呂律の回らない口を懸命に動かし、熱い息を吐く。
そんなかわいい泣き顔は、古賀の加虐心を煽り立てていった。
隠し切れない興奮に、思わず口の端が吊り上がっていく。
……恋人を裏切りたくないから、この関係を終わりにする?
今更、何を言っているんだろう、と思った。
そんな都合のいい話があるわけないだろ、と。
身体も繋がってしまったのだから、もうこの関係が無になることはない。それを、或斗に分からせる必要があるようだ。
「或斗」
名前を呼ぶと、ぐったりとした或斗が微かに頷いた。とろとろに溶けた顔が古賀を見上げる。
もう抵抗を見せなくなった或斗に、古賀は上からかぶさる様に口づけをした。或斗は目を瞑り、気持ちよさそうにそれを受け入れていていく。
うっとりと力を抜いた或斗の唇をひと舐めして、それから舌で唇を割りねじ込ませていくと、その口腔は蕩けそうなほど熱かった。
「んっ、ふ……ンン、ぅ、」
熱くて、熱くて、こちらの脳も溶けてしまいそうだ。
熱と同時に、アルコールの香りも口腔いっぱいに広がって……
「ッ、ンあぁっ」
ちょっと意地悪く、じゅるりと舌を啜ってやると、或斗は気持ちよさそうに腰を浮かせた。
「或斗ってば、かーわいい。ねェ、コマンド欲しい?」
古賀が問うと、或斗はコクリとひとつ頷いて潤んだ瞳をこちらへ向けてくる。
視線が交わると、古賀は或斗にグレアを注いだ。すると、ますます瞳が蕩けていって、熱い息が「はあ……」と漏れていく。
今日はまだ、コマンドを使っていなかった。
たっぷりとグレアを注いでやって、服従したくて支配されたくてたまらない状態にさせておきながら、ひとつも命令を与えていない。
本能の欲求が我慢の限界に達した或斗は……
「くださ、い……コマンド、ください。お願いします、なんでもします、おねがい、もう、我慢できない……」
自ら服従を宣言し、古賀を誘惑するようにその首に腕を絡ませて……下から強請る様に唇を重ねたのだった。
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