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Ni
「っぅ…………」
今まで感じたことのないような、激しい頭痛と胸やけのようなモヤモヤとした違和感に、或斗はベッドの中で唸った。
うっすらと目を開けて、ボーっと空間を見つめる。
ここは、どこ?
いま、なんじ?
どうして、寝てしまったの?
或斗は、不安に襲われながら、寝慣れないベッドの硬いシーツをくしゃりと握った。
ぼんやりと見つめた空間の先に、ふわりと漂う白い煙を見つける。くん、と鼻の奥でその匂いを嗅ぎながら、或斗はポツリと名前を呟いた。
「美津也、さん……」
懐かしい匂いは、パートナーのそれと同じだ。
なのに。
帰ってきた返事は、朝比の声ではなく。
「アハ、やっとあいつの名前呼んだねェ」
古賀の声であった。
でも、まだ或斗の頭は起きていないようで、思考が回らない。ただ古賀の顔をボーっと見つめて、タバコの匂いにもう一度浸る。
「美津也さんの、匂い……」
「或斗が好きかなーって思って、このタバコ吸ってみたけど。やっぱ俺は好きじゃないなァ」
そう言いながら、古賀はまだ中身の入っているタバコの箱を、ぐしゃりと握りつぶし……ひゅっ、と放り投げた。
ばこんっ、という音が遠くから聞こえて、それがごみ箱に見事入ったのだと悟る。
吸いかけのタバコも気に入らなかったようで……近くの灰皿にぐりぐりと押し付け、鎮火させて。
それからベッドをゆたっと揺らし、古賀が或斗の隣に入り込んできた。
「ここ、どこですか……」
ようやく頭が動き出し、或斗は古賀に問う。
問いながら、古賀の姿を見て……「っ!!」と息を飲んだ。
「えー、覚えてないのォ? ココ、駅前のラブホだけど」
クスクスと笑う古賀は、トランクス1枚という姿。
下着以外なにも身に着けていない、ほぼ全裸の格好に、或斗は「ひえッぇぇっう?!」と変な声をあげた。
「な、なん、で、はだか?!」
「なんでって……マジで覚えてないわけェ? つーか裸なのは或斗だかんね。パンツくらい穿かないと風邪ひくよ?」
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