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「なんだこれ?」
それはとある山での遭難の記事だった。
「ここって・・・。」
俺は半年前の記憶を辿っていた。登山が趣味の俺は、冬山登山でとある山を訪れていた。登り始めは快晴であったが、山の天気は変わりやすく、途中吹雪に見舞われた。俺の体温はどんどんと奪われ、疲労も限界に達していた時に、山小屋を見つけた。
「助かった。あそこでこの吹雪をやり過ごそう。」
小屋は薄暗かったが、何よりも吹雪ですっかり体温を奪われていた俺にとっては風雪が当たらないというだけでも外よりは全然暖かいし、命の危険を回避できたという安堵感に包まれた。
その小屋には誰が置いたかわからないようなレジャー用の折り畳み椅子が置いてあって、不安定なそれにこしかけた。地べたに直接座るよりは断然寒さを凌げる。
「ん?なんだこれ。」
椅子の下に、ペンが落ちているのを見つけた。ああ、先客の忘れ物だなと思い、俺はそのペンを拾った。何故か異様にそのペンに惹かれ、俺はそれを持ち帰った。ただ、何となく、それが俺の使命であるかのように。あくる日は嘘のように晴れ渡っていたので、俺はその小屋を出て下山した。
その後、あの山で遭難事故があり、とある男性が行方不明だということを知り、九死に一生を得たと思った。それ以来、その行方不明の男性が見つかったかどうかはわからないが、どうやら捜索は打ち切られたようだ。
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