親友とはのろけを聞かせるために存在する

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午前中の打ち合わせが押してしまい、ランチの時間が遅くなってしまった。 菜津子には先に、よく行くイタリアンのお店に行ってて貰った。12時12分。 会社から走ってきた私が、息を切らしてそのお店に駆け込むと、菜津子が「やっほー、咲良」と呑気にテーブルから、手を振ってくれる。 菜津子の前には、既にパスタが置かれてた。早っ。 「遅くなってごめんね。先に食べて」 「うん」 全く何の躊躇も見せずに、菜津子はフォークでパスタをぐるぐるに巻いて、食べ始めた。バジルたっぷりのジェノベーゼ、おいしそう。と、思ったけど、私はペスカトーレを頼んで、グラスのお水を飲んだ。 「で? あの後、私が帰ってから、マスターといちゃいちゃしてたの? 咲良は」 「いちゃいちゃって…」 まあ、したけど。それも、一晩おいて考えてみると、かなりお互いがっついてたような気がするけど。 何回も…それこそ、数えられないくらい、キスしちゃったし。 「き、キスはした」 「お店で?」 「いや、とも…マスターの家で。あそこのお店から10分くらい歩いたとこに、住んでるから」 「やん、咲良。大胆。付き合ったその日に」 「や、最後まではしてないしてない」 してもいいと思っちゃったことは、親友にも内緒。 「ほー。そもそもなんで、付き合うことになったん」 菜津子がにやにやしながら聞いてくる。 「えっと。マスターにプロポーズされてるんですか?って聞かれて、そこからなんとなく、告白した…というか、される流れになって」 「どっちだよ」 「えっと、私が告白しようとしたら、マスターにされた」 「つまり、元から両想いでした、と」 「結果を見れば、そういうことになるね」 「そっか」 ひとしきり私に暴露させると、菜津子は納得行ったみたいで、一人で頷いてから。 「良かったね、咲良」 そう言ってにっこりと笑った。 「でもなあ、私、マスターの気持ち、気づいてたよ」 「え?」 菜津子から聞き捨てならない発言が飛び出す。
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