親友とはのろけを聞かせるために存在する

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「どういうこと?」 「…うん。ほら、今日、咲良のバースデーケーキ頼んであったでしょ?」 「うん」 「あれのために先週もあのカフェ行って、マスターとも打ち合わせしてたんだ。私、結構無茶なお願いしたはずなのに、『咲良さんは余り甘いもの好きではないから、生クリームなどは控えめにして、フルーツ大目にしましょうか』とか言ってくれてさ。あ~、咲良のことわかってるし、大事に思ってくれてるんだな、って私、友人なりに嬉しかったんだよね。だから…まあ、マスターも咲良のこと、好きなんだろうなあ、って」 菜津子が昨日の舞台裏を教えてくれる。 「そんなことが…」 「うん。つまり、私は二人の恋のキューピッドだね」 「古っ。それに意味わかんない」 「えー、そうかなあ」 「そうだよ。けど、咲良、男運悪いからさ、親友としても心配してたんだよ」 「うっ」 自覚はうすうすしていただけに、私も言葉に詰まる。 大学の時の彼氏は、地方から出てきたせいもあったけど、講義よりバイトの方が忙しい人で、3年の時に結局中退して大学やめちゃった。大学やめたら、私ともぷっつり音信不通だし。 高校の時の初めての彼氏は、生徒会長なんてやるくらい、人気あったし、しっかり者の彼氏だったけど、よりにもよって親友と二股掛けられて、それがわかった瞬間、親友とふたりで、平手打ち食らわせてやって、呆気なく終わった。 最たるものが、あのあほ透だしなあ。 「今度は幸せになりたい」 「うんうん。幸せになるんだよ。けどさ、マスターも結構謎だよね」 菜津子が急に気になる一言を吐き出す。
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